ルイス・ボンファが全曲ボーカルをとった、非常に珍しいアルバム。(1963年)
ボンファといえば、まずギタリスト、次いで「黒いオルフェ」等の作曲家のイメージが強いが、意外にもボーカルも凄く巧い。ジョアン・ジルベルト張りのノンビブラートで正確な音程のボーカルを聴かせる。
彼は演奏(ギター)+作曲+ボーカルのすべての分野で高い能力を示す。オールラウンドプレーヤーとしては、ジョニー・アルフやカルロス・リラと双璧かも知れない。
アルバムの音的には、オーケストラのアレンジが施されているが、ボサノヴァ的というより、古き佳きサンバ・カンサォン風。だが、古臭いというより、懐かしく薫り高い感じがするのは、ボンファの音楽性の高さ故だろうか。リオの古い街並みや美しい自然が目に浮かぶかのような音楽。
曲はボンファの自曲を中心にサンバ・カンサォン風の他の作曲家の曲も若干入っている。「ジャズ・サンバ・アンコール」にも収録された、「ミニーナ・フロール」も良いが、抒情的な「海の歌」はピカイチで美しい。聴いていると、潮騒の音に抱かれて海辺にたたずむような気がする。
ギター・作曲・ボーカルの三位一体でボンファの音楽世界を堪能できる、こよなく美しいアルバム。