パイオニアのグラインドボーン音楽祭シリーズは全て素晴らしいですがこの1枚もその例にもれません。英国サセックスの小シアターで行われるこの音楽祭、18世紀のオペラ様式を現代に伝えるものとして「伝統」となっています。この「フィガロ」は73年公演ですが、あのピーター・ホール(英国演劇界の重鎮、映画「アマデウス」の演出もてがけました)の演出により、「更新」されたもの。LDでも過去発売があり、オペラファンの間ではずっと名盤として評価が高かったものがDVDで再販されたものです。
フィガロはいろんな公演がDVDで出てますのでお好きな方は見比べてご覧になることをおすすめしますが何か1枚、ということなら迷い無くわたしは本盤をおすすめします。現代の感覚でみると小さく感じる舞台はキャストの動き・表情をより近く感じさせ、臨場感が増します。そして魅力あふれるキャスト。伯爵役は当時のスーパースター、ベンジャミン・ラクソンですが、ラクソンを霞ませる?ほどの魅力で輝くのがスザンナ・ケルビーノ・伯爵夫人を演じる3ソプラノです。フィガロの特徴として当時の他のオペラに比してソロ(アリア)の比率が高くないことがあげられますがこの4名に劇中一曲ずつ与えられたアリアは言わずもがなの永遠の名曲。重唱でもおのおののキャラがよく出ていてこのあたりさすがホールの演出というところ。万人に自信をもっておすすめできる傑作。