監督、高畑勲、作画監督、大塚康生、場面設計、宮崎駿、原画、森康二、小田部羊一、奥山玲子。
作品に関わった人の名前だけをとっても、正に伝説の作品である。
作品に深く横たわる社会主義的な思想をどのように受け止めるかによって、
作品の印象が大きく変わるかもしれない。
ここは、純粋にイデオロギーから切り離して作品を楽しみたいと思う。
作品冒頭の水平方向に移動しながら繰りひろげられる、銀色のオオカミとホルスの戦闘シーンの緊張感と躍動感。
縦方向移動を十分に利用したグルンワルドとホルスの対峙シーンの緊張感の素晴らしさ。
ホルスと大カマスの戦闘シーンにおける、大カマスの大きさ、迫力。
少女ヒルダの複雑な二面性を描き切った演出、
そして森康二の上品なアニメーション。
迷いの森の斬新な演出と美術。
そして、作品全体に満ちわたる独特の緊張感と無駄のなさ。
どの次元から見ても超一級の作品でしょう。
アニメーションとしてみると、大塚康生の描く戦闘シーンがとにかくすごい。
冒頭の銀オオカミの絵は一コマ一コマが結構ラフな繋がりしかもっていず、
それがフィルムになると独特の躍動感を持って動くところがすばらしい。
今の日本のアニメーションに、このような複雑な動きをする作画を見出すことは難しいのではないだろうか?
師匠、大工原章流の作画を、さらに進化させた大塚康生作画の真骨頂で、まさに匠の技です。
また、宮崎アニメのファーンには、コナンやナウシカと同様のシーンを作品の冒頭に見、中盤にはもののけ姫のたたらばや砦を、
ヒルダの青い石にはラピュタとのかかわりを、村の描写には風の谷を、見出すであろう。
ここには、その後の宮崎アニメの原石の全てがある。
Blu-rayの画質は3.0、部分的にややfocusが甘くなるシーンがあるのは残念だが、
作品を楽しむのを妨げることはない。
また、音質は3.0、音は映画を楽しむのに十分だが、ステレオに変換しなおしてほしい。
東映アニメーションは、会社の輝かしい社史の一ページとしてこの作品を引き合いに宣伝しているが、
結局、この作品作成のスケジュールの遅延により、
会社は、高畑勲等の給料の減棒と、演出助手への降格という形で報いたのみだった。
日本アニメーション史上の傑作であることは明らかなのだから、
せめて、生み出された作品だけは、公開当時の画質に是非デジタルの手腕を用いて復元し、
最高の形で発売してほしい。
ジブリファーンと称している人で、この作品を万が一見ていない人がいたら、
是非見てください。今のジブリの全てがここにあります。