distance は日本語で「距離」「隔たり」「遠近」「行程」「道のり」などの意味が包含されているようです。ここでは「距離」と言うよりも、「行程」や「道のり」として捉えてたほうが理解のヒントになるような気がします。では何処に向かっての「道のり」なのか。
高度経済成長期からバブルへと向かうなかで人間らしさが問わる時代に何らかの違和感を持った人々がいた。カルト教団に惹かれていってしまう人々に共通していたのは、極めて真面目な人間であったことがこの映画から観察できます。その後のテロは絶対に許せるものではないことは当然でありますが、なぜこのような人間がいってしまうのかという極めて難しい問題に挑み映像化したのがこの映画、是枝監督30代後半の作品です。まずこの難しい問題に取り組み映像化したことに高い評価をしたいと思います。
映画の表現には多様な方法があるのでしょうが、この作品は文学の理論でいうロシアフォルマリズムの「異化」するとこに大成功しているものと思われます。いってしまえば、作品を鑑賞する側の想像力を喚起することで、我々の心に多くの問いをもたらすものとして成功しているのです。つまり監督の安易な主張よりも、社会を形成する人々が意識を持ち答えを探り出すきっかけとなる映画という是枝作品の特徴が鮮明に現れています。(それは詩的な映像や編集の方法として表現されています。)
「道のり」の行き先は、スマホで検索しても出てくるもではないのでしょう。しかし映像を通じて見えてくるものは、残された遺族が向かおうとしている、その「道のり」のようにも感じます。ある種、真面目な人々や小さな子どもが問いかける、どうしてなの?ということを忘れた大人たちによって世界が動いているとしたら、一体どちらが正常で「本当」なのでしょうか。
なんと言ってもこの映画には大事なテーマが通奏低音として流れ隠されています。「家族の解体」。残された水原アツシの姿に是枝監督の密かな思いが隠されているように思えます。この後の是枝作品のテーマに繋がる重要な作品であることは間違いないでしょう。
この作品は傑作です。
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DISTANCE(ディスタンス) [VHS]
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商品の説明
内容(「Oricon」データベースより)
「幻の光」「ワンダフルライフ」の是枝裕和監督が贈る、“ある一線”を超えてしまった人々と、“こちら側”にとどまった人々との心の距離を真摯とらえた人間ドラマ。ARATA、伊勢谷友介ほか出演。
レビュー
『ワンダフルライフ』などで知られる是枝裕和監督によるヒューマンドラマ。無差別殺人事件を引き起こしたカルト教団の実行犯の親族と元信者の交流を綴る。
-- 内容(「VIDEO INSIDER JAPAN」データベースより)
監督: 是枝裕和
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- 梱包サイズ : 18.6 x 10.64 x 2.85 cm; 173.88 g
- 監督 : 是枝裕和
- メディア形式 : 色
- 時間 : 2 時間 12 分
- 発売日 : 2002/6/25
- 出演 : ARATA, 伊勢谷友介, 寺島進, 夏川結衣, 浅野忠信
- 販売元 : バンダイビジュアル
- ASIN : B000066IJH
- 原産国 : 日本
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 313,854位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 12,233位日本のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年8月25日に日本でレビュー済み
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初期の是枝裕和監督作品はエンタメというより、物事のダークな面に焦点を当ててますよね。暗い話が多いです(万引き家族も暗いけど)。
道に迷うシーンの入りはよかったし、人間の描き方がよくて、普通に面白かった。
ただ物語に起伏がない分、ちょっと長いかな。
道に迷うシーンの入りはよかったし、人間の描き方がよくて、普通に面白かった。
ただ物語に起伏がない分、ちょっと長いかな。
2020年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これは傑作である。村上春樹がオウム信者のインタビューを集めた「約束された場所で」を読んでいると、この作品の良さが分かる。廃墟となった信者のアジトに電気だ通っているのは頂けないが、評価は低いようである。理解しにくいため、共感ができないからであろう。
2019年9月29日に日本でレビュー済み
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ドキュメントタッチをねらったのかは、よくわかりませんが、見ていてしんどいですね。
ダラダラとして映像も終始暗いです。
はっきり言って失敗じゃないかなぁ。
ダラダラとして映像も終始暗いです。
はっきり言って失敗じゃないかなぁ。
2020年3月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大事件より、そのサイドストーリー的なものに自分は面白みを感じる。
しかしそれでも、二時間近くただ不穏なザワつき感「だけ」に付き合うのは苦痛。
かと言って陳腐な盛り上げを演出するような話でもない。
思うに、オウム他、実際のカルト事件を想起させつつも
「架空の教団の、架空の遺族」から抜け出せていない事が
心にひっかからない原因かと思う。
ドキュメンタリックな作り、演者の自然な仕草はリアルだが
お芝居以上になっていない何かが共感を阻んでいる。
どうにかあと一歩踏み込んで、こちら側で見ている観客と接点をつなぐ工夫がほしかった。
しかしそれでも、二時間近くただ不穏なザワつき感「だけ」に付き合うのは苦痛。
かと言って陳腐な盛り上げを演出するような話でもない。
思うに、オウム他、実際のカルト事件を想起させつつも
「架空の教団の、架空の遺族」から抜け出せていない事が
心にひっかからない原因かと思う。
ドキュメンタリックな作り、演者の自然な仕草はリアルだが
お芝居以上になっていない何かが共感を阻んでいる。
どうにかあと一歩踏み込んで、こちら側で見ている観客と接点をつなぐ工夫がほしかった。
2020年9月2日に日本でレビュー済み
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手持ちカメラとアドリブ多用という、ドキュメンタリータッチの作品。
1999年にブレアウィッチプロジェクトが大変話題になったが、
この作品が公開されたのが2001年。
舞台も同じく森、という事で、おそらく多大なる影響を受けたものと推察される。
是枝監督の3作目の映画、という事が関係あるのかはわからないが、
いかにも低予算という雰囲気が全編を支配しており、自主制作映画
と言っても通りそうではあるが、俳優のメンツがかなり豪華。
(当時は無名だった?)
俳優が無名なら見なかったかもしれない、という危うさも。
アドリブシーンでは伊勢谷友介が一番いい味を出していたが、
知らない人間と長い間一緒にいるとあのようにどもりぎみに
なるのかもしれない。
その点はリアルだと思った。
長編のアドリブ作品としては「ペタルダンス」「M/OTHER(三浦友和主演)」などを見たが、
あそこまで叙景的というか、感覚的というか、わかりにくくもない。
ストーリー自体はわかりやすく、かつきちんと組み立てられており、
ラストのオチも秀逸で、
「地獄の黙示録」や「カリスマ(黒沢清監督)」あたりと同じ香りがした。
しかしあえて難を言えば、燃えすぎだろ、と。
ちょっと笑ってしまった。
やりたいことは痛いほど伝わってきたが、
疑似トキュメンタリーにしては中途半端な印象を受けたので、
もっとカメラをブレブレにするとか、いろいろと徹底してほしかった。
(そのへんはおそらく監督の意図するところではないだろうが)
因みに取り調べのシーンの構図が「万引き家族」と同じなのは
偶然ではないだろう。
あのような手法が好きなのかもね。
1999年にブレアウィッチプロジェクトが大変話題になったが、
この作品が公開されたのが2001年。
舞台も同じく森、という事で、おそらく多大なる影響を受けたものと推察される。
是枝監督の3作目の映画、という事が関係あるのかはわからないが、
いかにも低予算という雰囲気が全編を支配しており、自主制作映画
と言っても通りそうではあるが、俳優のメンツがかなり豪華。
(当時は無名だった?)
俳優が無名なら見なかったかもしれない、という危うさも。
アドリブシーンでは伊勢谷友介が一番いい味を出していたが、
知らない人間と長い間一緒にいるとあのようにどもりぎみに
なるのかもしれない。
その点はリアルだと思った。
長編のアドリブ作品としては「ペタルダンス」「M/OTHER(三浦友和主演)」などを見たが、
あそこまで叙景的というか、感覚的というか、わかりにくくもない。
ストーリー自体はわかりやすく、かつきちんと組み立てられており、
ラストのオチも秀逸で、
「地獄の黙示録」や「カリスマ(黒沢清監督)」あたりと同じ香りがした。
しかしあえて難を言えば、燃えすぎだろ、と。
ちょっと笑ってしまった。
やりたいことは痛いほど伝わってきたが、
疑似トキュメンタリーにしては中途半端な印象を受けたので、
もっとカメラをブレブレにするとか、いろいろと徹底してほしかった。
(そのへんはおそらく監督の意図するところではないだろうが)
因みに取り調べのシーンの構図が「万引き家族」と同じなのは
偶然ではないだろう。
あのような手法が好きなのかもね。
2020年12月27日に日本でレビュー済み
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現代社会の歪みが原因だと考えさせられた作品でした。
2020年1月25日に日本でレビュー済み
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レンタルでもあまり置いていないお店が多い、初期是枝作品の問題作。当時新進気鋭のモデルだったARATA(井浦新)や伊勢谷友介、既に売れっ子映画俳優として独自の道を歩んでいた浅野忠信の出演とあって、監督のネームバリューより役者のメンツの良さで映画館で見た。高学歴のエリートがどんどん道を誤ったオウム真理教の大事件もあって、是枝さんもこのテーマで映画を撮ったのだと思う。役者個々に全体のプロットを見せないスタイルはこの作品が原点だったはず。映画館でラストで度肝を抜かれた。注意深く、じっくり最後まで観るべき作品。是枝監督の伝説はここから始まった。