英国出身のメタルバンドRaging Speedhornが、2002年に出した2ndアルバムです。
今となってはこのバンドのことを覚えている人がどれだけいるのかわかりませんが、本作が出た当時はBeast FeastやSummer Sonicでの来日。日本を含む世界各地での音楽雑誌での高評価という、最も勢いに乗ってた時期でした。2008年に一度解散しますが、2014年に再始動。アルバムもリリースし、現在も元気に活動している模様。その割にあまり話題に上ってないのはどういうことなのか…。
「覚醒剤でいきり立った陰茎」という頭の悪いバンド名。音楽性もその名に恥じぬイキり様。暑苦しいツインヴォーカルが息つく間もなく吼え猛り、ハードコアでロケンローなリフと共に吐き散らかしまくる。その一方でスローチューンはズブズブのスラッジコア。知能指数の低そうなイメージとは裏腹に、様々な音楽要素が溶け込んでいます。
#1 "The Hate Song" は初っ端からいきなりブチ切れた咆哮が炸裂。曲自体はミドルテンポのグルーヴィーな曲なんですが、凄まじい勢いとテンションが炸裂しています。2分足らずであっという間に終わるもパンチの効いた曲です。
#2 "Scrapin' the Resin" はどろりとしたリフを強引に加速させ、ハイパーエクストリームなヴォーカルに載せてお届けするアップテンポナンバー。洗練とは無縁の直情的な暴力衝動が襲います。
#7 "Heartbreaker" はバラードとも言っていいぐらいメロディアスで哀愁漂うリフがテーマなんですが、ヴォーカルは相変わらず暑苦しく叫びまくっててしかもそれが曲の雰囲気に合っているという、まさにこのバンドにしか作れないタイプの曲。中盤の静かなパートは普通に70年代ロック感がありますし、後ろで鳴ってるアナログレコードのようなノイズ音も味わい深い。
#10 "Welcome to Shitsville" は序盤はうねりまくりのミドルパート。そして一瞬のブレイクを経てアップテンポへと加速。ここの繋ぎの部分が最高にかっこいいのですよ。後半はもう大暴走祭りとなります。
当時のメンバーは平均22歳。ニューメタル全盛の2002年に、70年代~80年代のロックやハードコア成分を濃厚に含み、最初から最後まで爆音で鳴らし続けるという実に特異なバンドです。ほぼ勢いで突っ走り、緩急やドラマ性は二の次になってますが、王道で普遍的なかっこよさもあり、時代を超えた名盤と呼ぶべきアルバムです。