メディア掲載レビューほか
“リヒテル最晩年の録音から”のシリーズはひとりの偉大なアーティストの軌跡の帰結を聴くことができる、という意味でたいへん興味深い企画であり、このシリーズを聴くと洗練や成熟、また“音楽の深み”ってどういうことだろうか、などいつも考えさせられる。
今回もまたバッハで大曲が収録されている。崇高で美しく、時にユーモアを感じさせる魅力的な演奏が続いている。また、ライヴでかつ録音がよいせいか巨匠の演奏がずいぶん身近に感じられるのも不思議である。確かにこれが音楽のもつ力なのであろう。リヒテルの紡ぎだすバッハの音楽は聴く者の心に強く訴えかけるパワーをもっている。リヒテルは音楽の(楽譜に書かれている)ほんの少しのことも見逃さずそれを自然に音にする。こまごまとした表現上の気の遠くなるような積み重ねが結果的におおらかで温かい光に満ちた音楽になる。そして彼は奔放ともいえる音楽の喜びを静かに、そこらへんにまきちらすのである。 (井上郷子) --- 2002年08月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
巨匠リヒテルの最晩年(91、92年)のモスクワでのライヴ録音。イタリア協奏曲など、まさに神々しいまでのバッハ演奏。こんな録音が残っていたとは驚きである。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)