早川義夫が、1969年のジャックス解散直後に発表したソロ・アルバム。早川は本作を最後に音楽活動から退くことになり、94年にカムバックするまでは唯一のソロとして半ば伝説化した作品だった。演奏はほとんどの曲が自身のピアノあるいはギターだけ、しかもガイドライン的な単音ばかりで、音を徹底して削ぎ落としヴォーカルだけを前面に出している。マイナー・コードの暗く重い曲が多く、それを彼は情念と怨念が入り混じったような生々しい声で歌い上げる。後にカヴァーされてヒットする名曲「サルビアの花」の美しいメロディーも印象的だが、特にラスト3曲の暗闇から響いてくるようなドロリとしたヴォーカルがすさまじい。歌詞は大半が本人ではないので、内面世界というものとはやや違うだろうが、表現者としての自己の深みを極限まで突き詰めたような作品である。(小山 守)
元ジャックスの早川義夫のソロ・アルバム。「無用ノ介」「サルビアの花」他を収録。 (C)RS