画期的企画! アルゲリッチ、クレーメル、バシュメット、マイスキーのスーパー・カルテットが繰り広げる壮大な音世界!お互いの音を感じ、それに機敏に反応し感興を繰り広げる4人は、時に火花を散らしながら、それぞれを劇的なものへと仕上げて行きます。
ブラームスの3つのピアノ四重奏曲のうち、もっとも高い人気を誇る「第1番」。今回、室内音楽のお気に入りのパートナーたち3人とこの曲に取り組んだアルゲリッチの演奏には、何人かの先達からの影響が見られる。だがアルゲリッチは、彼ら巨人たちの残した大きな足跡の中に姿を隠してしまうことも、彼らの演奏と張り合うこともしていない。今回の「ピアノ四重奏曲第1番」の演奏は、新鮮さ、生気、自由な解釈に彩られているが、ルービンシュタインがプロ・アルテ四重奏団と共演した1932年盤(BMGクラシック)ほど外面的な華やかさをねらったものではなく、ギレリスがベートーヴェン四重奏団と組んだ1948年盤(ドレミ)ほど鮮烈な盛り上がりを見せるものでもなく、さらには、ゼルキンがブッシュ四重奏団と録音した1949年盤(EMI)ほど知的な厳しさを感じさせるものでもないのだ。
アルゲリッチ、クレーメル、バシュメット、マイスキーが本作で目指したことは、シェーンベルクの言葉に集約されるだろう。1937年、シェーンベルクはこの「ピアノ四重奏曲第1番」の有名なオーケストラ用編曲版を仕上げ、こう語った――「この曲に関しては、非常にひどい演奏がまかり通っている。ピアニストは、優秀であればあるほど大きな音で弾くので、弦の音が完全にかき消えてしまうのだ。私は一度ですべての音が聞こえるようにしたかった。その意図は達成したと思う」。アルゲリッチとロシアのスーパースター級の弦楽器奏者たち3人も、その意図を達成した。すさまじいまでに自由奔放なフィナーレ――強打が執ように繰り返されるジプシー・スタイルの楽章――においてさえ、弦の音はハッキリと聞こえてくる。シェーンベルクがトロンボーン、シロフォン、グロッケンシュピールを伴うオーケストラを用いたのに対し、アルゲリッチは熟達したタッチとペダリングで勝負。彼女の生み出す音には、奇妙な官能性とツィンバロンを思わせる透明な響きがある。これを武器に、アルゲリッチは他の演奏者たちをさえぎることなくフィナーレを支配するのだ。
滅多に演奏されないシューマンの「幻想小曲集」は、後期の作品番号を与えられてはいるものの、この作曲家が初めてピアノ三重奏という形式に挑戦した作品である。アルゲリッチ、クレーメル、マイスキーの演奏は、味わい深さ、技巧性ともに申し分ない。(Stephen Wigler, Amazon.com)
ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ、ヴァイオリニスト、ギドン・クレーメル、ヴィオラ奏者、ユーリ・バシュメット、チェリスト、ミッシャ・マイスキーの演奏による、ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」、シューマン「幻想小曲集」を収録した2002年録音盤。 (C)RS