『わらの犬』(Straw Dogs)('71)
出演∶ダスティン・ホフマン、スーザン・ジョージ、ピーター・ヴォーン、デイヴィッド・ワーナー(ノンクレジット)、T・P・マッケンナ、デル・ヘニー、ケン・ハッチソン、コリン・ウェランド、サリー・トムセット、ドナルド・ウェブスター、レン・ジョーンズ、マイケル・マンデル、ピーター・アーン
監督∶サム・ペキンパー
※↑冒頭の「一生忘れない映画」は、"いい意味で忘れられない"ということです(念のため)。
映画ファンになったばかりの10歳代半ば頃に見て、強烈なインパクトを受けた映画が数本ある。その中の1本だ。一見おとなしそうな人間、ガサツだが素朴そうな人間、暴力とは無縁そうな人間……どんな人間の中にも潜む暴力衝動や獣性が、ふとしたキッカケでむき出しになり、予想もしなかった惨劇を生む。高校に入ったばかりの少年にとっては、大袈裟に言えば、人間観が変わるほど衝撃的な映画体験だった。
……という冷静な考えは、じつは後付け。最初に見た時の15歳の自分は、粗暴な田舎者のあんちゃんたちにロコツな嫌がらせや意地悪をされても、すべて善意に解釈するフリをして何もしない平和主義者の主人公の弱腰にイラついて、「さっさと反撃してブチのめしてやれよ!」と思ってました。主人公が反撃に転じるクライマックスでは、心の中で快哉を叫ぶこともあった。
後になって考えるに、この映画の登場人物たち(気弱で臆病な数学者、素朴なはずの地方青年、知的障害者や彼を身内に持つ普通の男など)の内にも暴力性向が潜むことに納得すると同時に、自分を含めた観客もみな同じ性向を内包していることに気づかされた気がする。数々のヴァイオレンス描写や緊迫した人間ドラマやサスペンスを散りばめた娯楽映画であると同時に、人間の本性を見つめた問題作だ。
[物語] アメリカ人の宇宙数学者デイヴィッド·サムナー(ホフマン)は、暴力に満ちたアメリカを逃れ、妻エイミー(ジョージ)の生まれ故郷のイギリス、コーンウォール州の片田舎に移住した。周囲に煩わされない静かな環境で、研究に没頭したいと願うデイヴィッド。だが、知識階級丸出しのよそ者のアメリカ人と、ノーブラで闊歩する美人の若妻は、地元民たちから完全に浮いており、嫌でも目を引いた。
古い家屋を借りて落ち着いたサムナー夫妻は、地元の若者たち数名を納屋などの修理に雇う。その中には、妻エイミーの元カレ、チャーリー(ヘニー)もいた。田舎町の男たちは、気のいい素朴な良民などではなく、酒場に屯するボス格で粗野なトム·ヘデン(ヴォーン)らは、デイヴィッドをからかいと嘲笑の対象として扱い、地元の名士で判事のスコット少佐(マッケンナ)も敵対視し、知的障害のあるヘンリー青年(ワーナー)はロコツな差別対象だった。
ある日、デイヴィッドは地元の青年たちに誘われて、狩りに出掛ける。青年たちは、狩り場にデイヴィッドを残して消え、その間にチャーリーとスカット(ハッチソン)が、留守宅に忍び入ってエイミーをレイプしてしまう。エイミーはそのことを秘密にしたまま、夫妻は住民が集まる牧師館の募金パーティに出席する。レイプ犯らも平然と出席しており、いたたまれないエイミーは、夫を急かして牧師館をあとにする。
その頃、ボス格ヘデンの娘ジャニス(トムセット)は、頭の弱いヘンリー青年を誘惑するようにパーティ会場の外に連れ出す。いたずら半分のその行為が、その後の惨劇の始まりだった。車で帰宅途中のデイヴィッドとエイミー夫妻は、怪我をしたヘンリーを拾って連れ帰ることになる。そんな彼らを待っていたのは常軌を逸した暴力と殺戮の嵐だった……。
古いことなので記憶が曖昧だが、何かの記事でこの映画がイギリスでは上映禁止になったと読んだ記憶がある。どこまでホントか、尾ヒレの有無も不明だが、平和なイギリスの地方の人々の間で暴力やレイプが日常化しているかのような内容に怒った女王が上映禁止にさせたとか……(笑) いずれにしろ、"犯罪王国"アメリカからイギリスに逃れてきた平和主義者が、アメリカ以上の暴力にさらされるという内容は、イギリス人には不愉快ですよね("国辱もの"ってヤツですか)。
私の一番好きな映画監督は、本作の監督サム·ペキンパーだ。私の初めての"ペキンパー体験"となったのが、この『わらの犬』だ。もっとも、私が彼を好きなのは、主に"最後の西部劇監督"としての彼なので、本作を見て即、彼のファンになったわけではなかった。しかし、彼にとって初めての現代劇『わらの犬』の強烈なインパクトがなかったら、遡って『昼下りの決斗』『ダンディー少佐』『ワイルドバンチ』『砂漠の流れ者』などを見てみたいと思わなかっただろう。
[余談] 妻エイミー役がスーザン·ジョージでなかったら、この映画、ここまでの成功はなかったと思う。彼女の出演作で有名なのは『わらの犬』と『ダーティ·メリー クレイジー·ラリー』ぐらいだと思うが、それだけで彼女は'70年代を代表する女優の一人になったと言ってもいい気がする。
わらの犬 [DVD]
フォーマット | 色, レターボックス化, ドルビー |
コントリビュータ | スーザン・ジョージ, ゴードン・M・ウィリアムズ, ダスティン・ホフマン, サム・ペキンパー |
言語 | 英語 |
稼働時間 | 1 時間 53 分 |
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商品の説明
Amazonより
平和主義者の宇宙数学者デイヴィッド(ダスティン・ホフマン)は、静かな生活を求めてアメリカから妻エイミー(スーザン・ジョージ)の故郷でもあるイギリスの片田舎に移り住んだ。しかし、そこにも暴力は存在しており、度重なる仕打ちに、ついにデイヴィッドの内に潜む暴力性が目覚めていく…。
巨匠サム・ペキンパー監督がはじめてアメリカ西部を離れ、現代イギリスを舞台に撮った究極の暴力映画。妻のレイプシーンをはじめ、次々と繰り出される暴力に主人公の怒りが爆発する過程が、ぞっとするほどスリリングに描かれていくが、人間なら誰しも持つ暴力性を肯定も否定もせず、ただありのままに捉えたペキンパーの冷徹な視点と、それを娯楽映画として共存させえているパワフルな演出が素晴らしい。凡百の見世物ヴァイオレンス映画と一線を画した傑作である。(的田也寸志)
レビュー
製作: ダニエル・メルニック 監督・脚本: サム・ペキンパー 脚本: デヴィッド・ゼラグ・グッドマン 撮影: ジョン・コキロン 出演: ダスティン・ホフマン/スーザン・ジョージ/ピーター・ボーン/T.P.マッケンナ
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- アスペクト比 : 1.78:1
- 言語 : 英語
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4975769257902
- 監督 : サム・ペキンパー
- メディア形式 : 色, レターボックス化, ドルビー
- 時間 : 1 時間 53 分
- 発売日 : 2002/9/27
- 出演 : ダスティン・ホフマン, スーザン・ジョージ
- 字幕: : 日本語
- 言語 : 英語 (Dolby Digital 2.0 Stereo)
- 販売元 : JVCエンタテインメント
- ASIN : B00006HBLR
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 112,519位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 3,893位外国のミステリー・サスペンス映画
- - 8,817位外国のアクション映画
- - 10,733位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.2つ
5つのうち4.2つ
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年10月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
違う仕様のレビューがいつものように結合されていますが、これはASIN:B005G48Q7O,EAN: 5030697019479のレビューです。2枚組リージョンオールですがPAL盤。2015年12月に初の邦盤BDが発売されます。その商品は「英国でリマスター&リストアされたUltimate 40th Anniversary Editionを原版にブルーレイ化」と告知されています。そこでもとになったと思しきUK盤Ultimate 40th Anniversary Edition(ただしDVD)を購入。1000円以下でした。本編英語字幕あり。再生環境にご注意ください。仕様は文末にあります(邦盤DVDは廃版、プレミア価格)。
静かな研究環境を求めて米から、妻の故郷のイングランド西部にともに移り住んだ天体数学者のインテリ、デヴィッド(ホフマン)と妻エイミー(スーザン・ジョージ)。鮮烈で重い暴力描写で、デヴィッドの思いもしなかった自己発見と夫婦の絆を描いたコントラバーシャルな作品。行為能力にやや欠ける村の青年を自宅にかくまったことから、青年の引き渡しを求める村の男達との間に図らずも展開する凄惨なヴァイオレンスと性というプリミティヴな本性の爆発。「ワイルド・バンチ」で猛烈な反響と一部の反感をかったペキンパーの初の現代モノです。またもや攻撃されましたが、すでに伝説的ともいえる支持を得ているのはご存じの通り。
振り上げた素手の延長にある生々しい陰惨な暴力。カタルシスとは無縁の発露(とはいえ、こちらの血が少なからず燃えてしまうのは、私にも主人公のような捻じれた無意識の導火線を抱えているためかも知れません。だから怖いのです)。本人が思いもしない獣性の側面を男も女も持つことを気づかされる傑作です。以下、気になった点を記しておきます。
・後半と対照的な静かな前半。しかし不協和音が通奏低音として不穏に流れています。荒涼として排他的、がさつで怠惰、卑屈なruralな怖さ。米コンプレックス、学歴・職業コンプレックス・卑下みたいなものがあるのでしょうか。情欲をかきたてるボディの妻への羨望?若者の描写に村の停滞や乱れっぷり・卑屈さが丁寧に描かれています。
・主人公は米のあわただしく治安の悪い暮らしを逃れてきたように描かれていますが、実は研究が進まず、焦燥・いらだちを抱えています。つまりいいわけとして逃げて来た人間。妻も自分を頼りない男だと思っているのではないか?(実際そういう点も見受けられます)。放埓な妻を理解できない、コントロールできない不満。後半の爆発は狂気という言葉では片付かない、コップの水がいずれ溢れるという必然の結果ではなかったか。
・家族・家を守るのが男の役割という実に米的(?)といっていい(西部劇のような)マッチョイズム。英の田舎で炸裂する米の本性。実際、これを思わせるホフマンのセリフ、This is where I live. This is me. I will not allow violence against this house. this is my affair.「オス」の縄張り意識や家長の自負ともいうべきものが根っこにあると思います。テリトリー、生殖、防衛本能。わらの仔犬から山犬へのホフマンの変貌。前半が抑えられているぶん、ペキンパーの芸術的スローモーションも効果的です。ホフマンのあの笑顔は怖いとともに、ブレイクスルー、脱皮した自分への陶酔や戸惑い(” I don’t, either”)、湧き出る自信もどこかに含んだ微妙な笑みです。
・一方、ペキンパーは本作を陰惨なものとしながら、賛美こそしていないですがどこか肯定する部分も見受けられます。現に「ワイルド・バンチ」や本作で、きれいごとや漂白された人間(信者・聖職者)への皮肉と軽蔑の視線が若干感じられました。虚飾や取り繕いを捨てよ・・。
・注目の登場シーンから唾を飲むスーザン・ジョージ。男をケダモノにしてしまう天使であり悪魔。満たされず、意識しない性への渇望? あの衝撃的な〇〇の時の振る舞い。抵抗と受け入れ、そして気付き・・。妻がいなければ主人公はどう行動したでしょうか。この妻の存在が本作では重要な役割を果たしています。しかしイイ女です。うれしい。特典の現在のインタビューでは年月の無情を感じましたが。
・本作は人の赤裸々なダークサイドを描くと同時に、この夫婦の愛の物語でもあるという点。お互いに不満やもどかしさや理解不能なものを持ちながら、この夫婦は間違いなく愛し合っています。ラストの後の2人はどうなるか。どちらともとれます。少数意見なことは承知していますが、(あのセリフにもかかわらず)2人はより分かち難く結びつく気がします。人生の共犯。
・事件の引き金になる制限行為能力らしき青年は、デヴィッド・ワーナー(「砂漠の流れ者」「戦争のはらわた」「オーメン」「タイム・アフター・タイム」。なぜかノン・クレジット)も寡黙な好演。
・たちこめる濃霧と暗がりの中、鳴り響く銃声、ガラスの割れる音、叫び声や怒声、そして大音量で鳴りわたるバグパイプにくらくらさせられます(これが鳴りやんだ瞬間!)。ジェリー・フィールディングの素晴らしく不穏な音楽とともに音響設計がよくできていました。
・原題は老子の『道徳経』の言葉に由来し、天地にとって万物は芻狗(祭儀に用いるわらの犬)のようなものでしかないという意味(wiki「わらの犬」)、また、「人間的存在である天から見れば、人間の行動は護身のために焼くわらの犬のようにちっぽけな存在にすぎない」(映画ドットコムより)という意味らしいです(英訳:The wise man is ruthless and treats the people as straw dogs)。
〇レストアについて。
this film has been fully restoredとジャケ裏に書かれています。Disc2の「before and after」を見て(わずか3分。同一カットの画面左半分にbefore、右半分にafterの画面が表示される方式)驚きました。フィルム傷、パラは取り除かれているのが分かります。しかし画調は悪くなっています。レストア前の方がしっとりして観やすく落ち着いた画調です。全体的に明度を上げすぎたように白く飛んだように見えます。単にコントラストを上げただけでしょうか。そのせいか誤った色補正を行ったせいかはわかりませんが、色も飛んでいます(特に空。レストア前は水色で、後は空が真っ白)。そのせいか明るくないところが汚く見えます。その割にクライマックスの室内場面は暗いまま(明るければいいというものでもありませんが)。全体的にガザッと粗く目に優しくない荒れた画調です。スキン・トーンに注意が払われていません。これをレストアというのなら、傷は残ったままでも触らない方がよかったです。改悪レストアといっていいかと思います。100人が観ればほとんどの方がレストア前の方がましな画調、色調というと思います。星は作品に対するもので、DVDとしては3つがいいところ。
本DVDは2011年10月24日に英国でDVD, BD同時発売されました。ですからBDはこのDVDと同一仕様(画調)、同じレストアを施したマスターと推察できます。単にBDメディアに記録したというだけのもの?(解像度?はデータ上差があるはずですが)。
2015年に発売される初邦盤BDの商品頁は、「英国でリマスター・リストアされたUltimate 40th Anniversary Editionを原版にブルーレイ化」と謳っています。もし仮に本商品(UK盤 Ultimate 40th Anniversary Edition、Fremantle Media Entertainment社発売)がマスターなら、日本でさらに独自に改善(再リマスター)されていれば、いや、英でのレストア前の画調に戻していればいいですね。ジャケはなぜか廃版の2003年、米クライテリオンDVDのもの。
IMDbによれば113分。Uncut118分。本ASINのDVDの裏ジャケにはUncutとあります。UncutでしょうがPAL盤であることが原因で4%早い113分表記になっていると思われます。
Straw dogs, 1971、 US・UK、ABC Pictures ・―、20th Century Fox( Japan )、Theatrical aspect ratio、1.85:1 , 113 min、118 min (uncut) 、Mono、Color
リージョンオール、PAL
映像仕様は16:9 LB、 画面アスペクト比は1.78: 1ぐらい
片面 ? 層、113min.(PAL盤のため4%早い)
音声:英語Dolby Digital 2.0ch stereo. 吹替えなし。
字幕:英語(本編のみ、聴覚が不自由な方用)。on・off可能、チャプターメニューあり
Disc1の特典
音声特典:いずれも英語字幕なし。
1. Commentary from Sam Peckinpah Biographers: Garner Simmons, David Weddle & Paul Seydor
2. Commentary from close friend and PA of Sam Peckinpah: Katy Haber
3. Isolated Jerry Fielding score in Stereo with additional cues(音楽スコアのみで再生)
Disc2の特典
映像特典:
〇1971 Original US theatrical trailer(1分40秒。ヴィスタ。本編にないカットあり。傷多し。字幕なし)
〇1971 US TV spots(3種。計100秒。4:3。字幕なし)、1971 US radio spots(2種。計90秒)
〇Interview with Susan George(24分)
〇Interview with Producer Dan Melnick(20分)
〇Interview with Sam Peckinpah Biographer Garner Simmons(22分)いずれも英語字幕なし
〇On location stills(4分。4秒に1枚ほどで連続再生)
〇Original publicity stills(3分。連続再生)
〇Original film posters & lobby cards(2分半と1分版。連続再生。前者は貴重かも)
〇History of Straw Dogs and the Censors(映画とソフトについての詳細な映像文字資料。長文。英語をじっくり訳していけば貴重そうなことが書いてあるようです)
〇Reviews、filmographies, facts & fascinating correspondence(映像文字資料。レビューや所信、パブコメント、多くのトリビア等。貴重)
〇Before and After: Restoring a classic(前述の通り。3分)
2枚目の特典動画部分の計は70分強。
発売:― 販売:Fremantle Home Entertainment 、 2011
関連キーワード:(未見の方はスルーしてください)
イングランド西部、移住、数学者、人妻、平和主義者、パブ、狩猟、rape, ライフル、霧、制限行為能力者、プロテスタント、疎外、農場、猫、露出、石の家
連想作:―
関連作:わらの犬(2011年リメイク)
静かな研究環境を求めて米から、妻の故郷のイングランド西部にともに移り住んだ天体数学者のインテリ、デヴィッド(ホフマン)と妻エイミー(スーザン・ジョージ)。鮮烈で重い暴力描写で、デヴィッドの思いもしなかった自己発見と夫婦の絆を描いたコントラバーシャルな作品。行為能力にやや欠ける村の青年を自宅にかくまったことから、青年の引き渡しを求める村の男達との間に図らずも展開する凄惨なヴァイオレンスと性というプリミティヴな本性の爆発。「ワイルド・バンチ」で猛烈な反響と一部の反感をかったペキンパーの初の現代モノです。またもや攻撃されましたが、すでに伝説的ともいえる支持を得ているのはご存じの通り。
振り上げた素手の延長にある生々しい陰惨な暴力。カタルシスとは無縁の発露(とはいえ、こちらの血が少なからず燃えてしまうのは、私にも主人公のような捻じれた無意識の導火線を抱えているためかも知れません。だから怖いのです)。本人が思いもしない獣性の側面を男も女も持つことを気づかされる傑作です。以下、気になった点を記しておきます。
・後半と対照的な静かな前半。しかし不協和音が通奏低音として不穏に流れています。荒涼として排他的、がさつで怠惰、卑屈なruralな怖さ。米コンプレックス、学歴・職業コンプレックス・卑下みたいなものがあるのでしょうか。情欲をかきたてるボディの妻への羨望?若者の描写に村の停滞や乱れっぷり・卑屈さが丁寧に描かれています。
・主人公は米のあわただしく治安の悪い暮らしを逃れてきたように描かれていますが、実は研究が進まず、焦燥・いらだちを抱えています。つまりいいわけとして逃げて来た人間。妻も自分を頼りない男だと思っているのではないか?(実際そういう点も見受けられます)。放埓な妻を理解できない、コントロールできない不満。後半の爆発は狂気という言葉では片付かない、コップの水がいずれ溢れるという必然の結果ではなかったか。
・家族・家を守るのが男の役割という実に米的(?)といっていい(西部劇のような)マッチョイズム。英の田舎で炸裂する米の本性。実際、これを思わせるホフマンのセリフ、This is where I live. This is me. I will not allow violence against this house. this is my affair.「オス」の縄張り意識や家長の自負ともいうべきものが根っこにあると思います。テリトリー、生殖、防衛本能。わらの仔犬から山犬へのホフマンの変貌。前半が抑えられているぶん、ペキンパーの芸術的スローモーションも効果的です。ホフマンのあの笑顔は怖いとともに、ブレイクスルー、脱皮した自分への陶酔や戸惑い(” I don’t, either”)、湧き出る自信もどこかに含んだ微妙な笑みです。
・一方、ペキンパーは本作を陰惨なものとしながら、賛美こそしていないですがどこか肯定する部分も見受けられます。現に「ワイルド・バンチ」や本作で、きれいごとや漂白された人間(信者・聖職者)への皮肉と軽蔑の視線が若干感じられました。虚飾や取り繕いを捨てよ・・。
・注目の登場シーンから唾を飲むスーザン・ジョージ。男をケダモノにしてしまう天使であり悪魔。満たされず、意識しない性への渇望? あの衝撃的な〇〇の時の振る舞い。抵抗と受け入れ、そして気付き・・。妻がいなければ主人公はどう行動したでしょうか。この妻の存在が本作では重要な役割を果たしています。しかしイイ女です。うれしい。特典の現在のインタビューでは年月の無情を感じましたが。
・本作は人の赤裸々なダークサイドを描くと同時に、この夫婦の愛の物語でもあるという点。お互いに不満やもどかしさや理解不能なものを持ちながら、この夫婦は間違いなく愛し合っています。ラストの後の2人はどうなるか。どちらともとれます。少数意見なことは承知していますが、(あのセリフにもかかわらず)2人はより分かち難く結びつく気がします。人生の共犯。
・事件の引き金になる制限行為能力らしき青年は、デヴィッド・ワーナー(「砂漠の流れ者」「戦争のはらわた」「オーメン」「タイム・アフター・タイム」。なぜかノン・クレジット)も寡黙な好演。
・たちこめる濃霧と暗がりの中、鳴り響く銃声、ガラスの割れる音、叫び声や怒声、そして大音量で鳴りわたるバグパイプにくらくらさせられます(これが鳴りやんだ瞬間!)。ジェリー・フィールディングの素晴らしく不穏な音楽とともに音響設計がよくできていました。
・原題は老子の『道徳経』の言葉に由来し、天地にとって万物は芻狗(祭儀に用いるわらの犬)のようなものでしかないという意味(wiki「わらの犬」)、また、「人間的存在である天から見れば、人間の行動は護身のために焼くわらの犬のようにちっぽけな存在にすぎない」(映画ドットコムより)という意味らしいです(英訳:The wise man is ruthless and treats the people as straw dogs)。
〇レストアについて。
this film has been fully restoredとジャケ裏に書かれています。Disc2の「before and after」を見て(わずか3分。同一カットの画面左半分にbefore、右半分にafterの画面が表示される方式)驚きました。フィルム傷、パラは取り除かれているのが分かります。しかし画調は悪くなっています。レストア前の方がしっとりして観やすく落ち着いた画調です。全体的に明度を上げすぎたように白く飛んだように見えます。単にコントラストを上げただけでしょうか。そのせいか誤った色補正を行ったせいかはわかりませんが、色も飛んでいます(特に空。レストア前は水色で、後は空が真っ白)。そのせいか明るくないところが汚く見えます。その割にクライマックスの室内場面は暗いまま(明るければいいというものでもありませんが)。全体的にガザッと粗く目に優しくない荒れた画調です。スキン・トーンに注意が払われていません。これをレストアというのなら、傷は残ったままでも触らない方がよかったです。改悪レストアといっていいかと思います。100人が観ればほとんどの方がレストア前の方がましな画調、色調というと思います。星は作品に対するもので、DVDとしては3つがいいところ。
本DVDは2011年10月24日に英国でDVD, BD同時発売されました。ですからBDはこのDVDと同一仕様(画調)、同じレストアを施したマスターと推察できます。単にBDメディアに記録したというだけのもの?(解像度?はデータ上差があるはずですが)。
2015年に発売される初邦盤BDの商品頁は、「英国でリマスター・リストアされたUltimate 40th Anniversary Editionを原版にブルーレイ化」と謳っています。もし仮に本商品(UK盤 Ultimate 40th Anniversary Edition、Fremantle Media Entertainment社発売)がマスターなら、日本でさらに独自に改善(再リマスター)されていれば、いや、英でのレストア前の画調に戻していればいいですね。ジャケはなぜか廃版の2003年、米クライテリオンDVDのもの。
IMDbによれば113分。Uncut118分。本ASINのDVDの裏ジャケにはUncutとあります。UncutでしょうがPAL盤であることが原因で4%早い113分表記になっていると思われます。
Straw dogs, 1971、 US・UK、ABC Pictures ・―、20th Century Fox( Japan )、Theatrical aspect ratio、1.85:1 , 113 min、118 min (uncut) 、Mono、Color
リージョンオール、PAL
映像仕様は16:9 LB、 画面アスペクト比は1.78: 1ぐらい
片面 ? 層、113min.(PAL盤のため4%早い)
音声:英語Dolby Digital 2.0ch stereo. 吹替えなし。
字幕:英語(本編のみ、聴覚が不自由な方用)。on・off可能、チャプターメニューあり
Disc1の特典
音声特典:いずれも英語字幕なし。
1. Commentary from Sam Peckinpah Biographers: Garner Simmons, David Weddle & Paul Seydor
2. Commentary from close friend and PA of Sam Peckinpah: Katy Haber
3. Isolated Jerry Fielding score in Stereo with additional cues(音楽スコアのみで再生)
Disc2の特典
映像特典:
〇1971 Original US theatrical trailer(1分40秒。ヴィスタ。本編にないカットあり。傷多し。字幕なし)
〇1971 US TV spots(3種。計100秒。4:3。字幕なし)、1971 US radio spots(2種。計90秒)
〇Interview with Susan George(24分)
〇Interview with Producer Dan Melnick(20分)
〇Interview with Sam Peckinpah Biographer Garner Simmons(22分)いずれも英語字幕なし
〇On location stills(4分。4秒に1枚ほどで連続再生)
〇Original publicity stills(3分。連続再生)
〇Original film posters & lobby cards(2分半と1分版。連続再生。前者は貴重かも)
〇History of Straw Dogs and the Censors(映画とソフトについての詳細な映像文字資料。長文。英語をじっくり訳していけば貴重そうなことが書いてあるようです)
〇Reviews、filmographies, facts & fascinating correspondence(映像文字資料。レビューや所信、パブコメント、多くのトリビア等。貴重)
〇Before and After: Restoring a classic(前述の通り。3分)
2枚目の特典動画部分の計は70分強。
発売:― 販売:Fremantle Home Entertainment 、 2011
関連キーワード:(未見の方はスルーしてください)
イングランド西部、移住、数学者、人妻、平和主義者、パブ、狩猟、rape, ライフル、霧、制限行為能力者、プロテスタント、疎外、農場、猫、露出、石の家
連想作:―
関連作:わらの犬(2011年リメイク)
2016年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
妻のエイミーと共にエイミーの故郷である片田舎に引っ越してきた数学者のデイビッド。
しかし、次第に村の若者に嫌がらせを受けるようになり、遂には妻がレイプされてしまう。
ある時、精神薄弱者のヘンリーを匿ったことにより、ヘンリーをリンチしようとする若者たちに攻撃を受けてしまう。
そこで仲裁に入った知人が撃ち殺された事によってデイビッドはついに「爆発」する・・・。
サム・ペキンパーが初めて描いた現代劇であり、バイオレンス映画の傑作。
そんな本作の一番の疑問。それはなぜデイビッドがヘンリーを彼らに引き渡さなかったのか?ということ。
デイビッドが黙って引き渡していればここまでの大事件に発展しなかったであろう。
妻がレイプされても何もしなかったデイビッド。しかし、デイビッドはヘンリーを守る為に激しい暴力を持って彼らに対抗する。なぜか?
デイビッドは村人たちに「よそ者」として嘲笑される。ヘンリーも精神薄弱者である為、同じく「よそ者」扱い。
この関係性がクライマックスの暴力に繋がるのだ。全てはこれがきっかけであろう。
・・・いや、抑えられていた「もの」が解き放たれた時点で、そんな事はデイビッドにとってどうでもいい事だったかもしれない。
やりきれないラストはそのようなことを物語っているような気がする。
ここで本商品の画質について。
リストア、HDリマスターとあるが・・・・確かに旧画質と比べてフィルム傷が消え、シャープになっている。
しかし、コントラストが強く、画面が明るすぎる。むしろ雰囲気的には前の画質よりも「古い」映画に感じてしまうのだ。
比較映像も確認したが、冒頭部分なんて全然違う。旧画質に映っていた影が新画質では明るすぎて大部分が消えてしまっている!
印象ががらりと変わってしまっていたのだ。これじゃ画質悪くても前の方が良い気がしてしまう。
リストア作業はフィルムの雰囲気を壊さずに行うのが当たり前じゃないのか??☆一つ減点なのはこれが原因だ。
ブルーレイを出してくれたのはとても有り難い。だが、画質に関して確実に好みが別れるだろう。
まぁ70年代の映画と考えると、この方が当時の雰囲気を味わえるかもしれない。
しかし、次第に村の若者に嫌がらせを受けるようになり、遂には妻がレイプされてしまう。
ある時、精神薄弱者のヘンリーを匿ったことにより、ヘンリーをリンチしようとする若者たちに攻撃を受けてしまう。
そこで仲裁に入った知人が撃ち殺された事によってデイビッドはついに「爆発」する・・・。
サム・ペキンパーが初めて描いた現代劇であり、バイオレンス映画の傑作。
そんな本作の一番の疑問。それはなぜデイビッドがヘンリーを彼らに引き渡さなかったのか?ということ。
デイビッドが黙って引き渡していればここまでの大事件に発展しなかったであろう。
妻がレイプされても何もしなかったデイビッド。しかし、デイビッドはヘンリーを守る為に激しい暴力を持って彼らに対抗する。なぜか?
デイビッドは村人たちに「よそ者」として嘲笑される。ヘンリーも精神薄弱者である為、同じく「よそ者」扱い。
この関係性がクライマックスの暴力に繋がるのだ。全てはこれがきっかけであろう。
・・・いや、抑えられていた「もの」が解き放たれた時点で、そんな事はデイビッドにとってどうでもいい事だったかもしれない。
やりきれないラストはそのようなことを物語っているような気がする。
ここで本商品の画質について。
リストア、HDリマスターとあるが・・・・確かに旧画質と比べてフィルム傷が消え、シャープになっている。
しかし、コントラストが強く、画面が明るすぎる。むしろ雰囲気的には前の画質よりも「古い」映画に感じてしまうのだ。
比較映像も確認したが、冒頭部分なんて全然違う。旧画質に映っていた影が新画質では明るすぎて大部分が消えてしまっている!
印象ががらりと変わってしまっていたのだ。これじゃ画質悪くても前の方が良い気がしてしまう。
リストア作業はフィルムの雰囲気を壊さずに行うのが当たり前じゃないのか??☆一つ減点なのはこれが原因だ。
ブルーレイを出してくれたのはとても有り難い。だが、画質に関して確実に好みが別れるだろう。
まぁ70年代の映画と考えると、この方が当時の雰囲気を味わえるかもしれない。
2019年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
リマスタリングでブルーレイということで購入したが、作品が古く元々のフィルムも粒子が荒い画質だったので期待するほどの画質向上では無い。
物語については散々評価されてきて評価の分かれるところだが、私は主人公のインテリで気弱な男が、最後には冷徹で傲慢な破壊者になってしまうという人間の恐ろしさを、淡々と演じるダスティン・ホフマンの演技が素晴らしく、傑作のひとつと思う。
女の悲しい性を見事に演じたスーザン・ジョージもエロティックで魅力的。
物語については散々評価されてきて評価の分かれるところだが、私は主人公のインテリで気弱な男が、最後には冷徹で傲慢な破壊者になってしまうという人間の恐ろしさを、淡々と演じるダスティン・ホフマンの演技が素晴らしく、傑作のひとつと思う。
女の悲しい性を見事に演じたスーザン・ジョージもエロティックで魅力的。
他の国からのトップレビュー
J.J. Tarantino
5つ星のうち4.0
Ottima edizione
2019年1月24日にイタリアでレビュー済みAmazonで購入
Edizione strepitosa con una qualità d’immagine e audio eccezionale (probabilmente la stessa delle celebre edizione americana Criterion) e tanti extra interessanti, come le interviste. Il film è da Top 3 della filmografia di Peckinpah, dietro al Mucchio selvaggio e Pat Garrett e Billy The Kid : un caposaldo di brutalità da vedere e rivedere con un Dustin Hoffman è una Susan George in stato di grazia.
Film lover
5つ星のうち5.0
Deliverance, U.K. style?
2017年3月18日にカナダでレビュー済みAmazonで購入
A somewhat far-fetched story made credible by director Sam Peckinpah and his cast and crew.
Definitely controversial because the film suggests the female lead, played by Susan George, brought on her rape by the way she dressed and behaved. Peckinpah's reputation as a misogynist supports this view.
Regardless, the film's final half hour really delivers the goods and makes the whole exercise worthwhile.
Similar to Deliverance in that there are no winners, only non-heroic survivors.
Definitely controversial because the film suggests the female lead, played by Susan George, brought on her rape by the way she dressed and behaved. Peckinpah's reputation as a misogynist supports this view.
Regardless, the film's final half hour really delivers the goods and makes the whole exercise worthwhile.
Similar to Deliverance in that there are no winners, only non-heroic survivors.
Phil Rowan
5つ星のうち4.0
Straw Dogs
2020年1月17日にオーストラリアでレビュー済みAmazonで購入
This is the original and best version of this movie. Arrived before due, in excellent condition.
Philippe BARRAT
5つ星のうち5.0
OHHH
2013年7月6日にフランスでレビュー済みAmazonで購入
Excellent concert d'Alice Cooper.
A voir absolument merci
Excellent produit a voir et à revoir.
Vous ne serez pas decus.
A voir absolument merci
Excellent produit a voir et à revoir.
Vous ne serez pas decus.
F.K. Hoffmann
5つ星のうち5.0
Wegweisende Studie über die animalische Natur des Menschen
2009年7月23日にドイツでレビュー済みAmazonで購入
Gewalt ist zweifelsohne ein zentrales Thema in der Filmgeschichte, doch nur selten gibt es Filmemacher, die über die Natur der Gewalt reflektieren und diese nicht zum reinen Selbstzweck einsetzen. Eine Naturgewalt unter den Regisseuren, Sam Peckinpah, gilt wahrscheinlich als der Wegbereiter in diesem Bereich. Nachdem sein extrem brutaler und kontroverser Film "The Wild Bunch" 1969 den Western entmystifizierte und damit Filmgeschichte schrieb, legte er mit "Straw Dogs" zwei Jahre später noch einen drauf.
Wie kann sich Gewalt in das Leben unbescholtener, anständiger Bürger schleichen und diese selbst zu extremen Gewalttaten verleiten? Mit seinem bis vor kurzem in Deutschland indizierten Filmkunstwerk "Straw Dogs" präsentierte er eine schockierende Antwort.
Mit Dustin Hoffman fand Peckinpah die ideale Projektionsfläche für seine Ambitionen, da dieser Anfang der 70er (wie auch später) ein enormer Publikumsliebling war, der sich vor allem mit seiner Rolle in "Die Reifeprüfung" diesen Status erarbeitet hatte. Die Rolle in Peckinpahs Film entsprach absolut nicht dem, was das Publikum erwartet hätte und bedeutete einen radikalen Schnitt in Hoffmans Filmografie.
Er spielt den amerikanischen Mathematiker David Sumner, der mit seiner bildhübschen Frau Amy (Susan George) in eine scheinbar idyllische englische Kleinstadt zieht und dort von den Bürgern größtenteils mit Missgunst empfangen wird. David ist ein zurückhaltender, friedlebender Mensch, der die Schikane seines Umfeldes zur Missgunst seiner Frau ignoriert. Doch die Situation beginnt unweigerlich zu eskalieren...
Was folgt, gehört zum Verstörendsten, was das Kino jemals hervorgebracht hat. Peckinpah zwingt uns zur Identifikation mit den Protagonisten und es folgt eine Reise in menschliche Abgründe, die eine enorm umstrittene Vergewaltigngsszene und ein quälend langes, entsetzliches, von Gewaltspitzen geprägtes Finale beeinhaltet. Der Film hat nichts von seiner Schockwirkung verloren und erweist sich thematisch als absolut zeitlos.
Die Produktion erwies sich als sehr schwierig, zum Teil durch äußere Umstände, aber vor allem durch kreative Differenzen mit den Darstellern, die von Peckinpah teilweise regelrecht getrieben wurden. Doch entstanden ist einer der vielen Höhepunkte der 70er, dem goldenen Jahrzehnt der Filmgeschichte, keine gelackte Studioproduktion, sondern ein künstlerisch brilliantes Testament für großartiges Filmemachen.
Wie kann sich Gewalt in das Leben unbescholtener, anständiger Bürger schleichen und diese selbst zu extremen Gewalttaten verleiten? Mit seinem bis vor kurzem in Deutschland indizierten Filmkunstwerk "Straw Dogs" präsentierte er eine schockierende Antwort.
Mit Dustin Hoffman fand Peckinpah die ideale Projektionsfläche für seine Ambitionen, da dieser Anfang der 70er (wie auch später) ein enormer Publikumsliebling war, der sich vor allem mit seiner Rolle in "Die Reifeprüfung" diesen Status erarbeitet hatte. Die Rolle in Peckinpahs Film entsprach absolut nicht dem, was das Publikum erwartet hätte und bedeutete einen radikalen Schnitt in Hoffmans Filmografie.
Er spielt den amerikanischen Mathematiker David Sumner, der mit seiner bildhübschen Frau Amy (Susan George) in eine scheinbar idyllische englische Kleinstadt zieht und dort von den Bürgern größtenteils mit Missgunst empfangen wird. David ist ein zurückhaltender, friedlebender Mensch, der die Schikane seines Umfeldes zur Missgunst seiner Frau ignoriert. Doch die Situation beginnt unweigerlich zu eskalieren...
Was folgt, gehört zum Verstörendsten, was das Kino jemals hervorgebracht hat. Peckinpah zwingt uns zur Identifikation mit den Protagonisten und es folgt eine Reise in menschliche Abgründe, die eine enorm umstrittene Vergewaltigngsszene und ein quälend langes, entsetzliches, von Gewaltspitzen geprägtes Finale beeinhaltet. Der Film hat nichts von seiner Schockwirkung verloren und erweist sich thematisch als absolut zeitlos.
Die Produktion erwies sich als sehr schwierig, zum Teil durch äußere Umstände, aber vor allem durch kreative Differenzen mit den Darstellern, die von Peckinpah teilweise regelrecht getrieben wurden. Doch entstanden ist einer der vielen Höhepunkte der 70er, dem goldenen Jahrzehnt der Filmgeschichte, keine gelackte Studioproduktion, sondern ein künstlerisch brilliantes Testament für großartiges Filmemachen.