井上さんは、若い頃レコーディングより生でお客さんの前で歌いたい〜という気持ちが強かったとお話しされてた事があって、多分この頃はスタジオ録音は少しばかり苦手分野だったと思います。その分差し引いても、才能の煌めきを十分感じられる作品だと思います。we were dancingも闇が広がるも、数年後にブロンスキー、トートを演じるのですから、その準備のためというか、その役を演じる事への強い意志を、爽やかで綺麗な歌い方の底にしっかり持っておられたんだなあと感じます。 でも、実は私が一番好きなのが、一曲めのモーツアルトLacrimosaです。東京芸大声楽科でクラシックを勉強した成果がはっきりわかる曲を、実は井上さんはほとんど歌っておられないのです。だから大変貴重な選曲です。あと色んなジャンルの曲が一枚のCDに入ってるのが、不思議な印象です。素晴らしい努力家で少しいつもどこか不思議なところが魅力の芳雄さんらしいCDです。