先日購入してはじめて聞きました。つくづく傑作だと思います。
1972年。39年前のレコード。斎藤哲夫22歳のデビュー作。しかしその言葉と音楽の輝きは未だ失われてはいません。
とりわけ1、6/8無題(素晴らしい人生) 3、悩み多き者よ 7、日の丸 あたりの、ゆったりとした曲調にのせて、
人間と世界の本質を射る言葉によって紡がれた歌は、まさに青空に吸い込まれてゆくようなひろがりと深さを持っています。
その後の斎藤氏の歌世界が中景から近景へ、親しい世界を歌うことが多くなってきますが、
この1作目はまさに永遠と今、未来へのノスタルジーのような感覚に貫かれているようにも思います。
その歌の透明さゆえ、悲しみに満ちているようにも、歓びに彩られているようにも聞こえ、聞く者の感情を解き放ってくれる力を持っているようです。
このアルバムは、時代によって色褪せることはありません。そしてどんな時代でも、音楽家や詩人や作家は、このような作品を生み出す努力を惜しんではならないと思います。