監督は『上海特急』 (1932)のジョセフ・フォン・スタンバーグ、1930年のドイツの映画です。原作はハインリヒ・マンが1905年に発表した『ウンラート教授 : あるいは、一暴君の末路』(松籟社 2007年)。
ヒロインのローラを演じたマレーネ・ディートリヒは、この作品で一躍国際的な名声を得ることになります。
ギムナジウムの教授であるラート(エミール・ヤニングス)は、独身で初老の堅物な男。生徒たち(見るからに中産階級)が町の居酒屋に巡業で来ている小劇団の歌姫であるローラの楽屋に頻繁に出入りしていることを知り、彼女の部屋に乗り込んでいきます。ところが逆に、ラートはローラに魅入られ、ついには結婚を申し込み、そしてそれが悲劇的な最期をもたらしてしまいます。
ラートの中産階級的知性は危うい脆さを併せ持ち、当時のドイツ人の様々な精神的未熟さを象徴しています。そしてローラの世慣れた小悪魔的な魅力には太刀打ちできず、彼女の周りの男たちに残酷に利用されて屈辱的な敗北を喫します。
物語の全体的な悲劇性は映像的に、表現主義の手法により照明によって強調された影や顔のアップ、歪んだセットなどによって効果的に丹念に描写されています。