国民文学の父、吉川英治の珠玉の名作「宮本武蔵」。その原作の趣きを巨匠内田吐夢が忠実に映画化。
武蔵を描いた映画の中では、他の追随を許さない至極の五部作である。本作はその三作目。
物語は、柳生の庄を訪れた武蔵。達人柳生石舟斎が切った芍薬の枝、その切り口の非凡さを見抜けなかった吉岡伝七郎。方や武蔵は一瞥しただけで、達人の切り口と見抜く。
そして柳生四高弟から、枝の切り口を何故非凡と感じたかと問い詰められる。
武蔵は「感覚は感覚。答が欲しくば太刀を取って試せ。」と挑発する。
此処で初めて二刀を抜き構える。
この辺りは武蔵と他の武芸者との格の違いが見事に表現されおり、見ていて湧く湧くする好演出だ。
武蔵の生涯の敵、佐々木小次郎が登場。
一方、旧友の本位田又八は、女に溺れ、酒に溺れる。
卑屈で情け無い男全開だ。
この辺は、ストイックな武蔵との対比がとても上手い演出。
木村功の駄目男の好演も光る。
自分も武蔵の様に生きてみたいと思わせる、啓発的な演出が絶妙。
京の吉岡道場。武蔵から果し合いを受けた吉岡清十郎。
ところが、客人として訪れた佐々木小次郎に「木剣に鬆が入っている。」と清十郎の実力を見抜かれる。
そして清十郎との果し合い。
木剣を選んだ清十郎。
勝負は一瞬で終わり、清十郎の左腕の骨は粉々になった。
勝った武蔵だったが、「名門の子、やる相手では無かった。」と気を引き締める。だが、名門吉岡道場の道場主に勝ち、次第に自信を付けて行く武蔵。
本作は単なるチャンバラ時代劇映画では無い。
先ず珠玉の原作を読んでから映画を見る事をお勧めする。
人生の啓発映画と言っても良い。
見る人にもよるが、自分を顧みれる人なら、間違い無く清々しい気分になる事は請け合い。
惜しむらくは、ケースとDVDにNO'3とマジックで書いてあった事かな。