ピーターソンの発掘ライヴ。1972年のソロ・ツアー中に録音されたもので、前半8曲は8月にレバノン、バールベックで、あと6曲は11月にアムステルダムで収録されている。
相方を意識する必要のないソロの場合、ピーターソンは別のすごさを発揮する。ルバートを効かせてテンポを自由に伸縮させ、興が乗ってくるとダブルタイム(曲の途中でテンポを倍速にすること)をまじえてとめどなく疾走する。『枯葉』や『ボディ・アンド・ソウル』があるからしっとりした演奏も聴けるだろうなんて思っているとやけどするので、お気をつけあそばしませ。
かれはアート・テイタム直系といわれることが多い。ここでもハーレム・スタイルの奏法を入れてかれの音楽のルーツを示している。ヴァーチュオーソ全盛時代の雰囲気。左手のたくましさは驚異的だ。ベーシストがいなくてもがっちりしたベースラインが刻まれていく。パウエル派中心に聴いている人には新鮮だと思う。もちろん世代がちがうから和声感覚が新しく、モダンなヴァーチュオーソ。古くさいわけじゃない。
国内盤はわざわざ『枯葉』をアルバム・タイトルにしているので、誤解のないよう(老爺心から)こげなレビューを書きました。おあとがよろしいようで…。