英国屈指のロック・バンド、ザ・ウェディング・プレゼントが1992年の1年間かけて展開した月刊シングル・シリーズ“THE HIT PARADE”。毎月第一月曜日に7インチ・ビニール盤のフォーマットでA面新曲、B面カヴァー・ソングを収録したシングルを限定1万5千枚のプレスでリリースするというこの企画は、バンドにとって今もなお最高傑作と謳われるSteve Albini録音の『Seamonsters』に続く新しいステップとして期待を集めました。また、そのある種時代錯誤的なリリース形態も手伝って大きな話題を呼び、結果としてバンドは一般的には過去最高の人気を得る所となり、英シングルズ・チャート上でもバンド史上(現時点では)最初で最後となるTOP10ヒットも生まれ、さらに全12枚がTOP 30入りを果たし、当時エルビス・プレスリーが有していた連続チャート・イン記録に並ぶキネス・レコードとなる、誰も予想しえなかった大成功を収めています。
そのリリース形態や記録自体が凄いのは確かですが、さらに素晴らしいのは1枚1枚のシングルが当時もっとも脂の乗っていたバンドとそのソングライター、デイビッド・ゲッジの魅力を余すところ無く刻み込んだ傑作揃いだったという事実。The Close LobstersやAlterd Imagesなど同世代のバンドから古いR&B、映画音楽や笑ってしまう様なバンドの曲まで、幅広いジャンルの曲を取り上げながらも全て換骨奪胎して自分たちの色に染め上げてしまう圧巻のB面カヴァーも含め、紛れもなくザ・ウェディング・プレゼントの歴史に残る“もう1つのピーク”として記憶に留められる素晴らしい名曲/名演ぞろいです。
その12枚24曲のシングルは上半期6枚を収録した『Hit Parade 1』、下半期6枚を収録した『Hit Parade 2』という2枚の編集盤にまとめられ、当時は日本盤でも発売されました(そして今のところ最初で最後の来日公演が1993年3月に行われています)。その後この2枚は日本盤は言うまでもないですが、母国英国でさえもここ数年廃盤の状態にあり、結果としてその2作の編集盤はリマスタリング/アートワークの体裁が今ひとつな米国盤のみという状況にありました。
しかし、今回嬉しい事にフロントマンのデイビッド・ゲッジ監修の元、英Camden Deluxeレーベルより2枚組として全12枚のシングルが改めてまとめられました。
今回は1枚目のCDに全てのA面曲、2枚目のCDにB面曲、という構成。プロジェクトの性格からすると妥当なまとめ方だと思いますし、実は当時から本来ならこの形で発表するつもりだったのが、レコード会社の意向もあって2枚に分けて発表されたのだといいます。ボーナストラックが入る訳ではありませんが、同じCamden Deluxeからの『Bizarro』『Seamonsters』のリイシュー盤同様、そのリマスタリング効果は折り紙付きの素晴らしいものです。