1961年11月、西ドイツ・ミュンヘンでのライブ録音
エリック・ドルフィーがコルトレーン・バンドの一員としてJATPツアー(ノーマン・グランツ主宰)
に参加した時のライブ演奏。音質は、わるい。M1は曲の途中から始まるし、客が自前の録音機器で
録ったような音。肝心のドルフィーの演奏は、くぐもった彼方からようやく聴こえてくる。
全曲をドルフィーがバス・クラだけで演奏しているということで、”どんなものか聴いてみたい”
となるが、その期待はしぼんでしまう。メンバーは、コルトレーン・バンドからマッコイ・タイナー
とエルヴィン・ジョーンズ、ディジー・ガレスピーバンドからメル・ルイスという強力な面子と
なっているが、どこか緩んだ(よく言えばリラックスした演奏)になっている。
ドルフィーはメル・ルイス以外とは日常的に演奏しているが、やはり即席バンドであるだけに、
アンサンブルに緊張感がない。バス・クラ1本に絞ったのも、何か意図があってというよりも、
持ち替えるのが面倒だったのか、このライブをお気軽に捉えていたように思える。そのトーンも、
いつもの凄みのある、宇宙の暗黒に一瞬で持っていかれるような深淵なものではない。
M1「On Green Dolphin Street」で、ドルフィーはソロの最後にドボルザーク「家路」の
メロディーを吹いたりして、ヨーロッパの客を喜ばせる。その後のマッコイのピアノソロは
長いだけで退屈。曲終わりも尻すぼみ。
M2以降は、リラックスした様子が板についてきたというか、それなりにこなれた演奏になり、
全体が聴きやすくなる。ラストのM4「Oleo」になると、マッコイのピアノもスイングし、
自分がコルトレーン・コンボで訪欧していることなど忘れてしまっているよう。しかしこれも
演奏が長い。18分あるが、10分でもいいし、8分でもいい。
全体としてマニアかコレクター向きのアルバム。