プレトニョフというと端整で技巧的な演奏が印象的だが、ラフマニノフに関してはそれだけでない、熱情のようなものを感じた。
プレトニョフはテクニックに関しても文句のない演奏であるが、他のピアノ曲演奏とは違って、この曲に関してはいい意味でくずれた(くずした)演奏である。
それは、シャインを観た方なら腑に落ちるかもしれないが、この曲のもつ業(ごう)のようなものを引きずっているからかもしれない。メランコリックなまでのロマンチシズムが感じられるのは、プレトニョフが芸術家としてこの曲に取り組んだからに違いないはずである。
テクニックだけなら機械にでも出来る。しかし、確かなテクニックを持ちしかもそれに裏打ちされた、熱情(パッション)を表現できるからこそ芸術家だといえるのかもしれない。