豪快で歌心あふれるグリフィンのメジャーデビューアルバム、1956年シカゴ録音。地元のレコード会社に録音したというが、録音はモノーラルながら、相当いい。ブルーノートの音に近いが、それよりいいと思う。サックスが浮かび上がってくるような、リアルな音である。マラソンセッションの頃のマイルスの名盤と較べても、遜色ない名盤である。
演奏もメロディアスで、どこかで聞いたようなスタンダード曲がときおり聴こえてくる選曲。後日のグリフィンの録音(リトルジャイアンツやブローイングセッション等)を知らない人にはジャズの楽しさを感じさせようが、すでに聴いて堪能して居る身には、教科書的な、歌心いっぱいのジャズに聴こえたです。
1(I Cried for You)ではきらびやかで豪快の吹きますが、コロコロした音色のピアノはややノスタルジック。2(Satin Wrap)はグリフィンらしい、コードを繰り返すフレーズで始まるが、終盤かなりの熱のこもったブローである。3(Yesterdays)はこれまたグリフィンの特徴であるが、寂しげなバラードでありながら朗々と吹く。マイナーなドラマを歌い上げているのだと思う。4(Riff-Raff)もフレーズを繰り返して始まるが、朗々と、溌剌としたブロー、コロコロと明るいピアノソロが受ける。A面の終曲で、シンプルにまとめている。
5(Bee-Ees)は日曜の午後のような曲調で、やや単調か。6(The Boy Next Door)も日曜の午後。こちらもリラックスした曲。7(These Foolish Things)は出だしからして、朗々と懐かしさ一杯に吹き、出色の出来。モダンジャズを代表する演奏といえるかもしれん。ピアノもバックでコロコロとした音色でよく支えている。8(Lollypop)は、くつろいだ雰囲気のB面の終曲で、終盤にはドラムが煽るような場面もあり、コンサートのフィナーレのような演奏でもある。
特にいいのは1〜4曲めのグリフィンと豪放なホーンの特徴が出た演奏と、7曲めの歌心あふれたホーンと評価します。