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Chick Coreaが亡くなって丸三年が経った。そこで、彼の不滅の名作にしてダンモ史に燦然と輝く金字塔＜return to forever＞の思い出話を書いてみたい。
この頃、Richard Bach著『かもめのジョナサン』(五木寛之訳)が大ヒットしていた。だから今でもこの美しいジャケットと『かもめのジョナサン』という言葉がシンクロし、彼のFender Rhodesのエレピが聞えてくる。（ジャケの鳥がカモメではなくカツオドリということを数十年後に知る。でも、カモメでいいや・・・）
私はこのアルバムを1973年頃に、大学の生協で購入して帰省したことを覚えている。国内盤でレーベル（レコード真ん中に貼られたラベル）はPolydor。既にSwing Journal誌の1972年度ジャズ・ディスク大賞金賞（銀賞も彼が１年前録音した＜Piano Improvisations Vol. 1＞）を受賞したことも知っていた。だから、ラジオで何度か聴いてはいた。ラジオだから当然レコード全部なんかかけないし、曲も一部しか聴けていなかった。それでも、私が少しだけ聴いてきたジャズとは違う「爽快感」というか「軽さ≒軽薄さ＝ポップさ」みたいなものを感じた。『しぁんくれーる』（M. Davisが日本で唯一訪れたジャズ喫茶店。京都河原町通荒神口）で腕を組み頭を垂れて聴くジャズとは異なるものだと感じた。
＜return to forever＞ エレピがとても自然に聴こえた。って言うかこのエレピの音でなければならなかった思う。必然であった。音に重みのある生ピアノではこの作品の世界観は出せなかった思う。そして、まるでスキップをするように“軽やか”なS. Clarkeのb、何と凄い指の動きだ！と思った。だが決してbだけが突出しているわけではない、調和していた。一方、A. Moreiraのdsはシンプルだ。J. Farrellのfl,ssもストレートでシンプルで伸びやかだ。当時私が「ポップさ」を感じたのはvoが入っていたからだろうか。（私はFlora PurimをCoreaの妻となったGayle Moran といつも混同してしまう。PurimはMoreiraの妻。勘違いを繰返している。）Coreaは1969年にWayne Shoterの＜Super Nova＞(1970年度JD大賞銀賞)でvo入りのセッションに参加していた。私は＜Weather Report＞(1971年度JD大賞金賞)を聴いた時のような加工臭さがなかったと記憶している。今になって思えば、この透明感ナチュラル感はECM=Manfred Eicherの制作に因るところも大だ。
私は＜Bitches Brew＞にリアルタイムで接しジャズの変革に驚愕した。それから50年以上経った。M. DavisもCoreaもW. Shoterもいなくなってしまった今、＜return to forever＞を振り返ると、これをダンモ史上最後の変革epoch-makingな作品と位置付けたいのだ。それだけ重要な作品であったと思えている。それは、自身も参加した＜Bitches Brew＞の簡素化・軽量化・透明化であり、ソフトでライトで平易なポピュラー性のあるメロディーを有したジャズの道筋を示したことにある。そして、その後のジャズ及びその周辺の音楽に多大な影響を及ぼしたからだ。
私が好きで色々調べながら聴いてきているジャズの流れの中で、変革epoch-makingな作品はこの後生まれていないと認識している。Keith Jarrettの＜Solo-Concerts＞はジャズピアノ独奏の革命であったが、彼のone and onlyな演奏様式でり『個』の醸成であった。
思い出した。＜return to forever＞の熱がまだ冷めやらぬうちにReturn to Foreverのグループ名で発表された＜第7銀河の讃歌＞にはビックリするやらガッカリするやらその変節に複雑な思いをした。
今年になって＜The Montreux Years＞と＜The Future Is Now＞を買った。私は＜Now He Sings, Now He Sobs＞と＜A.R.C.＞が好きだ。
こうして書いたら３年間の気持ちが吹っ切れた気がしている。
Chick Corea様 安らかに・・・ 合掌 Mr. Armando Anthony Corea, Forever・・・
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