マイルスがジャズと云う出自から脱却し "マイルスミュージック" の嚆矢となった作品と私は位置づけ評価しています。マイルスはジャズや先達に敬意を払いつも自分にしか現せない音楽を模索していました。それが後に "マイルスミュージック" と呼ばれる唯一無二のマイルスの精神世界と成りました。
"マイルスミュージック" の代表作を一枚選ぶとすれば即座に本作品「死刑台のエレベーター」を挙げます。しかし、"マイルスミュージック" の山脈には2つのピークがあり、並ぶ一つは「On The Corner」です。この二つが大山脈の根幹です。「死刑台のエレベーター」は「On The Corner」の母となり、「On The Corner」は1991年に未完となった "マイルスミュージック" の父となりました。
「死刑台のエレベーター」を評価できないのは「今の所できていない」ので将来に期待出来ますが、低評価の確信的評価は残念至極と云うほかありません。それがマイルスを聴く限界であり "マイルスミュージック" を俯瞰して楽しめないということだからです。誠に勿体ないことであります。しかしながら、他人の感性に口は挟めませんので致し方御座いません。
では、なぜこの作品が "マイルスミュージック" の魁けでありピークの一つなのでしょうか? それは此処に "マイルスミュージック" の要素が凝縮されているからです。それはテクニックであり楽想を生む思想が詰め込まれているからです。
テクニックの中には「おんしょく・ねいろ」がありますがここで聴かれる音色は嘗て出した事の無いもので、マイルスのマニフェストとも云うべき独立宣言であります。その意味で "マイルスミュージック" の魁けと云えます。
この録音時マイルスは欧州楽旅の途中であり、一般に入手可能な音源は 『1957年11月30日 Olympia Theatre, Paris (France)/So What 盤・united archives 盤』『1957年12月4, 5日「死刑台のエレベーター」』『1957年12月8日 "Concertgebouw", Amsterdam, Netherlands/united archives 盤』とあり微妙な音色の変化を聴く事ができます。
「死刑台のエレベーター」以前に唯一その音色が、ウイスキーの複雑な香りの中の一つのように聴き取れる曲が一曲だけあります。推敲に推敲を重ねた楽想と音色が思わず知らず出てしっまたかのように私は思います。その曲は11月30日の「Bag's Groove」です。ここでの音色と極く僅かのフレーズは「死刑台のエレベーター」そのものです。無意識の緊張故に起きた反応かと察します。
その緊張の解けた1957年12月8日 "Concertgebouw", Amsterdam の公演でも「Bag's Groove」を演っていますが一聴 11月30日 とは違う今までの「Bag's Groove」となっています。
勿論「死刑台のエレベーター」を堺に一転したのではなくクロスオーバーしつつ前進して行ったのです。小さなピークを作りつつ「On The Corner」の必然に邁進したのです。
マイルス者としては "マイルスミュージック" を BGM としては畏れ多くて聴きませんがしかしそれは勿論アリです、楽しむのが音楽なのですから。ただ、"マイルスミュージック" に関心がおありならば「死刑台のエレベーター」はその根幹を成す最重要のアルバムであることを記憶のどこかに留めてくれれば何時か楽しみのお役にたつかも知れません。
*「完全版」やその音質に疑義があるようですが、マイルス者としては感謝の限りです。別テイクの音質はオリジナルとのリバーブ編集の違いでそもそも比較対象では無いと思います。私はその生々しい音質にメイキングとして鬼気迫るものを感じました。
死刑台のエレベーター[完全版]
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, CD, 2016/10/26
"もう一度試してください。" | SHM-CD | ¥1,349 | ¥1,100 |
CD, 1994/12/19
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥402 |
CD, 2011/6/22
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥439 |
CD, 2003/4/23
"もう一度試してください。" | 通常盤 |
—
| — | ¥449 |
CD, 限定版, 2005/9/14
"もう一度試してください。" | 限定版 | — | ¥702 |
CD, 限定版, 2010/9/22
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥784 |
CD, 限定版, 2014/10/8
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥980 |
CD, 限定版, 1997/8/25
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥990 |
CD, 限定版, 2002/5/29
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥1,400 |
CD, 限定版, 2017/3/8
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥10,000 |
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曲目リスト
1 | テーマ |
2 | カララの殺人 |
3 | ドライヴウェイのスリル |
4 | エレベーターの中のジュリアン |
5 | シャンゼリゼを歩むフロランス |
6 | モーテルのディナー |
7 | ジュリアンの脱出 |
8 | 夜警の見回り |
9 | プティバックの酒場にて |
10 | モーテルの写真屋 |
11 | シャンゼリゼの夜 (take 1) |
12 | シャンゼリゼの夜 (take 2) |
13 | シャンゼリゼの夜 (take 3) (テーマ) |
14 | シャンゼリゼの夜 (take 4) (シャンゼリゼを歩むフロランス) |
15 | 暗殺 (take 1) (夜警の見回り) |
16 | 暗殺 (take 2) (エレベーターの中のジュリアン) |
17 | 暗殺 (take 3) (カララの殺人) |
18 | モーテル (モーテルのディナー) |
19 | ファイナル (take 1) |
20 | ファイナル (take 2) |
21 | ファイナル (take 3) (モーテルの写真屋) |
22 | エレベーター (ジュリアンの脱出) |
23 | 居酒屋 (take 1) |
24 | 居酒屋 (take 2) (プティバックの酒場にて) |
25 | ドライヴウェイ (take 1) |
26 | ドライヴウェイ (take 2) (ドライヴウェイのスリル) |
商品の説明
Amazonレビュー
『死刑台のエレベーター』は1957年制作のフランス映画。ルイ・マル監督の出世作であり、主人公のモーリス・ロネとジャンヌ・モローが不倫関係の末、殺人を犯すという、いわゆるサスペンス映画。その音楽を担当したのはオリジナル・クインテットを解散した直後のマイルス・デイヴィス。57年にマイルスは単身渡仏、現地のバルネ・ウィラン、ルネ・ユルトルジュ、ピエール・ミシュロ、ケニー・クラークを含むクインテットでツアーを行い、それが終了後、同じメンバーで映画音楽に取り組んだ。事前に映画に目を通していたマイルスはあらかじめいくつかのメロディの断片を用意、本番ではラッシュ・フィルムを観ながら即興で音楽を完成させていった。そのため映画のサウンドトラックとはいえ、演奏はジャズそのもの。サスペンス映画ということで、それにあわせた緊張感あふれる演奏が特徴。本作はオリジナルLPに未収録だった別テイクをすべて追加したコンプリート盤で、映画用に加工される前の生の演奏を聴けるのが魅力だ。(市川正二)
メディア掲載レビューほか
`JAZZ THE BEST`シリーズの第1回発売分(全100タイトル)。マイルス・デイヴィスによる映画音楽集。1957年録音盤。 (C)RS
登録情報
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 梱包サイズ : 14.22 x 11.68 x 1.27 cm; 107.73 g
- メーカー : ユニバーサル ミュージック クラシック
- EAN : 4988005330352
- 時間 : 1 時間 14 分
- レーベル : ユニバーサル ミュージック クラシック
- ASIN : B00008KJUE
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 125,244位ミュージック (ミュージックの売れ筋ランキングを見る)
- - 929位ビバップ
- - 5,640位サウンドトラック (ミュージック)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年4月23日に日本でレビュー済み
2020年5月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひとり居て
隠れて暮らす
我が宿を
静かに充たす
マイルズの音
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我が宿を
静かに充たす
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2015年11月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
名作であることに間違いはありません。マイルスにしてはトランペットの演奏自体も安定しています。
ジャケットが昔LPで馴染んだエレベーターの隙間(?)であがく男性のものの方がよかったと思います。
ジャケットが昔LPで馴染んだエレベーターの隙間(?)であがく男性のものの方がよかったと思います。
2015年12月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
懐かしいデイビスが再び聞けた(^-^) シルバー世代にお勧めです。
2014年11月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
伝説では、フィルムを観ながら即興で演奏したと巷間伝えられていましたが、完全版が出ることによって、誰も言わなくなりました。モンクとの喧嘩セッションなど、Miles本人が否定して、これも誰も言わなくなりました。音楽に余計な先入観を与える伝説が無くなることは、とても良いことです。ただ、別テイクをすべて収録すればいいというものでもないと思ったです。
2014年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画を見てバックで流れる音楽が映画をより雰囲気あるものに作り上げている・・・
と知ったかぶってますが、映画も1回軽く見たぐらいで実際の購入理由はジャケ買いです。
この映画の音楽をマイルスは即興演奏しての録音だそうで・・・どれほどの才能の持ち主だったんでしょうね~
CDの裏表紙に耳に直接トランペットを当てている写真が・・・た、たまらん!!私にも同じ体験を!!
と知ったかぶってますが、映画も1回軽く見たぐらいで実際の購入理由はジャケ買いです。
この映画の音楽をマイルスは即興演奏しての録音だそうで・・・どれほどの才能の持ち主だったんでしょうね~
CDの裏表紙に耳に直接トランペットを当てている写真が・・・た、たまらん!!私にも同じ体験を!!
2015年10月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ルイ・マル監督の名画「死刑台のエレベーター」のサウンドトラック盤。マイルス・デイビスのトランペットは気高く、力強く、軽快で、哀愁を帯びていて、あまりにも美しい。ヒリヒリする。ドライブ感もある。ウッド・ベースもいい。お薦めの1枚。
2021年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
お買い得でした〜。マイルスのアドリブを聴きながら靴磨きをするのがストレス発散の一つになってます。映画自体も面白かったですが、こうして音楽パートだけ聴いていてもちゃんと成立している(当然か)のがさすがマイルスですね。ともあれテーマ以外の部分は本当に効果音然としておりますので、自然に聞き流しちゃってますww