まず、ブラームスの方はいつものアルゲリッチ節が炸裂している。共演者との息も合っており、最後まで聴く者を圧倒する。こちらはすばらしい名演だが、「イメージ通り」なので詳しくコメントする必要はないと思う。
次に、メンデルスゾーンの方は、カザルスのホワイトハウス・コンサートのCDと比べると、ややおとなしめである。しかし、やわらかな包容力のある演奏であり、何よりも音楽を奏でる喜びに満ちている。そして、アルゲリッチは基本的には若い二人の弦楽奏者の引き立て役に回っており、少なくとも冒頭ではいつものアルゲリッチ節は影を潜めている。
曲が進むにつれて、いつもの「アルゲリッチらしさ」が出てくるが、自分だけが前へ出ようという姿勢は微塵も見られない。自分の良さを出しつつも、共演者との、これ以上ない絶妙なバランスを保っているのである。ここにアルゲリッチが一流と呼ばれる所以を垣間見た気がした。
共演者のカプソン兄弟も、若手ながら技術的にも音楽的にも非常に豊かのものを持っており、アルゲリッチと共演しても見劣りするところがない。やわらかな音色が非常に魅力的である。
以上より、アルゲリッチ・ファンの方はもちろん、アンチ・アルゲリッチの方にこそぜひともお薦めしたい名演である。
なお、日本盤とヨーロッパ盤はCCCDだが、米英盤はCD仕様になっている。日本盤がCD仕様なら文句なしの5つ星だったのだが…。