バスター・キートンの最高傑作は「将軍(大列車強盗/大列車追跡)」をストーリーの完成度で挙げる人もいるが、やはりキートンの醍醐味はストーリーの中で光るアクション!
そんなワケで“バスター”の名に相応しい傑作の一つ「荒武者」のレビュー。
個人的には「カメラマン」か「蒸気船」辺りがキートンの最高傑作だと思うが、この作品も素晴らしい映画だ。
“荒々しく武る者”・・・うーん素晴らしい邦題。
日本が武士なら西洋は紳士、アメリカは開拓者だ!
闇み討ちの悲劇から始まるファースト・シーン、街に出て行く娘。
長年対立を続けて来たキャンフィールド家とマッケイ家。
そこの息子として生まれ育った主人公(キートン)。
月日が流れ、マッケイ家を継ぐべく故郷に戻る事となった。
街に行くまでギッコンバッタンな機関車の旅。
レールが鉄じゃないから自由自在(笑)
連結器具が簡単にちぎれたり、レールから外れて走り続けたり、車輪そのものが取れるって整備不良とかそんなレベルじゃねえ(爆)
機関車をトコトコ追いかける犬が可愛い。
ススだらけになったキートン、口周りにチャップリンのチョビヒゲみたいなススが・・・のどかだなぁ。
夫婦喧嘩しているところを仲裁に入ったら、奥さんに突き飛ばされるなど随所に転がる笑いにはクスッとなってしまう。
犬と戯れるキートンが無性に可愛いのは何故だ。
あの笑わないけど表情豊かなところが愛嬌を感じんだよなぁ・・・チャップリンとはまた違う魅力だ。
そんな「嵐の前の静けさ」が過ぎ去り、キートンは命懸けの争いに巻き込まれていく。
継ぐはずの家はキャンフィールド家によって爆破され廃墟。
そこに列車に同乗した娘に夕食に誘われる。
だが何という運命の悪戯、彼女はキャンフィールド家の娘だった。
息子と父親はマッケイの「忘れ形見」を暗殺しようと常に隙を伺う。
暗殺のピンチをのらりくらりと回避していくキートン。
次第にキートンはキャンフィールド家の娘と恋中になってしまう。
家族が殺そうとしている男を愛してしまった娘・・・ストーリーが凄すぎてコメディという事を忘れそうだ。
そんな時、キートンが娘にキスしているところを父親が見てしまう。
パパ(^ω^)「あの男が好きなのか?」
娘J('▽`)「はい・・・。」
パパ(^ω^#)「うちの娘に手え出しさかってビキビキ#」
食事の場面における「ウインク」のやり取りは良いねー。
ここまでまったく飽きずに楽しませてくれたが、ラスト10分に及ぶキートンと親子たちの怒涛の追走劇でテンションはさらに盛り上がる!
爆走するキートン、馬にまたがり疾走、断崖から川に落水、列車強盗、そんでもって滝における「救出劇」!!
「セブン・チャンス」に並ぶキートンアクション!
思わず拍手してしまうほど凄いシーンだった。
ラストシーンがまたいいね。
ドアを開けたら熱い抱擁と口づけをする二人にバッタリ。
パパ(^ω^;#)「貴様そこを動くなビキビキ#」
しかしそれは結婚式の立会だった・・・娘の本気の愛、そんな娘を命懸けで救った男の本気の愛・・・娘心の前に憎悪は消えていく・・・美しいラストだ。
コメディの一括りで片付けるには惜しい作品。
俺がサイレント映画を好きな理由は、今と違って誰もが体を張って自ら危険な役に挑んでいくという点だ。
モチロン今の時代でもそんな凄い役者はいくらでもいる。が、その精神が黎明期から磨かれていた事に俺は胸を打たれた。
合成もスタントマンもほとんどいない、正に命懸けの芝居!
音のないはずの世界から聞こえて来る人の呼吸と破壊音!
これだからサイレント映画はたまらない。
今の時代にも受け継がれる「役者魂」がここにあるんだ。
特にバスター・キートンは凄いぜ。
確か「探偵学入門」じゃ首の骨が折れた状態で撮影を続行したんだぜ!?さすが元祖ジャッキー・チェン。
少なくともクレージーな役者魂はチャップリンすら凌駕すると思うよ。