渡辺はま子、李香蘭(山口淑子)と続く、戦後の中国路線を引き継いだ、チャイナメロディの歌姫・胡美芳。
デビュー曲の「薔薇薔薇處處開」は渡辺はま子(ビクター)との競作、ヒット曲の「夜来香」も山口淑子(同)との競作だが、胡美芳はそれぞれを日中両国語で歌い、またこのCDでは、時代を反映してか、マンボのリズムで「夜来香」、「チャイナ・マンボ」「夜来香の女」などを歌っている。
全体的に、なんだか50年代の香港映画の主題歌を聞いているようで、なんだかワクワクしてくる。
なお、胡美芳は日本生れの中国人。戦中は家族で中国に疎開し、戦後日本人の妻となり、夫と命からがら帰国した。戦後彼女が歌う「孟姜女」が短波ラジオで流れたのを聞いた中国の家族から手紙が届き、ずっと離れ離れだった家族と再会できたという。
最後の「私は生きてます」は、彼女が自分の人生と丁度反対の、中国で生れた日本人残留孤児の為に歌った歌。