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バロック調の豪華城館に、ひとりの男が迷い込む。城内では社交界のゲストが集うパーティーが催されており、男はそこでひとりの女を見つける。「去年マリエンバートで僕たちは出会った」と女に声をかける男だが、女にその記憶はない。だが男に迫られるうち、女は過去と現在の境を見失い、その記憶は曖昧なものになっていく…。
冒頭から断片的な事象を語るナレーションがモノクロ映像を彩り、観客はあたかも「男」と同じように、城館のパーティーへと迷い込む。そこで描かれている事柄は、見る者の人生体験、体調、思想や趣向によって大きく異なる。現実と幻想が入り乱れるその映像は物語を語るためのものではなく、記憶を刺激するエレメントでしかない。あたかも白昼夢のような映像体験。予告編に謳われている、この「立体映画より立体的な経験」の仕掛け人は、50年代の文壇に論争を巻き起こした作家アラン・ロブ=グリエと、「夜と霧」で高い評価を受けたアラン・レネ監督。
難解な作品ではあるものの、その難解さを楽しむつもりで、イメージの洪水に身を任せて見るべし。そこには“現在のあなた”が見えてくるはずだ。そしてまた別の機会に、別の角度からこの映画を見れば、新しい発見があるはずだ。リトマス試験紙のような映画。(斉藤守彦)
レビュー
監督・脚本: アラン・レネ 原作・脚本: アラン・ロブ・グリエ 撮影: サッシャ・ヴィエルニー 音楽: フランシス・セイリグ 出演: デルフィーヌ・セイリグ/ジョルジュ・アルベルタッツィ/サッシャ・ピトエフ
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)