Amazonレビュー
ブリットポップといえば、60年代の精神から抜け出せず、退屈なギター・ロックにへばりつく伝統主義者たちのことがただちに思い浮かんでしまうのが残念だ。というのも、アスリートのデビュー・アルバムとなる『Vehicles & Animals』をちょっとしたブリットポップの名作と呼んでみたくなったからだ。イースト・ロンドンの4人組は、皮肉な観察眼と、スクイーズ、XTC、ブラー(ただし『Modern Life Is Rubbish』の頃)の中間を行くようなサウンドで本作をつくり上げた。繊細な実験精神、お遊び感覚あふれるトリッキーな電子音、明るく楽観的なポップ・スピリットが良い結果を生んだ作品である。
「You Got the Style」は、多文化都市ロンドンの抱える人種間の騒乱をテーマにした曲。どこまでも楽観的な明るい曲調の中、フロントマンのJoel Pottが「そんなもの笑い飛ばしてやろうぜ/これが真のイギリス人気質ってやつさ(We should be laughing about it / Making the most of the true British climate)」と呼びかける。Tim Wanstallのシンセ・ラインは、あらぬ方向へと弾むビーチ・ボールのよう。もちろん、みんなで歌うひときわ派手なコーラスもアスリートの得意とするところだ。「El Salvador」が時おり見せる輝きや「Beautiful」がまき散らす驚嘆の念がそれを証明している。だが、何とも愛すべき無防備さがあるので、それほど押しつけがましい感じはしない。「Westside」は、静かでアコースティックな前奏で幕を開け、Pottが壊れそうなかすれ声でおずおずと合図するとコーラスに突入する――「どこに目を向けても分かる/みんなロック・シーンに加わりたいんだ(Wherever you look you can see / Everybody wants to be part of the rock scene)」――すると音楽が一気に生気を帯びてくるのだ。
この明るさと元気のよさは、ひょっとしたら新たなイギリス人気質の特徴なのかもしれない。世の中がまた明るくなってきたようだ。(Louis Pattison, Amazon.co.uk)