犬神サーカス団はハードでキレの良い演奏と犬神凶子のはっきりと聞こえる歌、個性的な歌心を感じさせるボーカルが特徴です。
このアルバムではロックンロールを基調としながら、人類絶滅後は、ロックンロールが理想郷を作り上げるというコンセプトのアルバムです。
アルバム全体に統一感があり、時代に対するアンチテーゼも感じさせる素晴らしい出来栄えです。
では全曲レビューします。
1. 啓示
世紀末について凶子が民衆に演説を行っています。コンセプトアルバムの雰囲気を盛り上げています。
2. ロックンロール・ファイヤー
疾走感のあるロックンロールナンバー。「砂のように崩れゆく倫理思想の脆い壁」とか「不浄のこの世界破壊せよ、王国を立て直せ」とか「形而上学振りかざす金持ちどもの高笑い」など歌詞がイカシテいます。
3. 儀式
不気味な音楽と共に怪しい呪文を唱えています。
4. 奇跡
ハードなギターに導かれ、ミディアムテンポで展開します。ボーカルがとても良い感じ。どす黒い血の儀式によって不気味な旋律に乗ってロックンロールの英雄たちを次々に呼び覚ましていきます。ドラムのフィルインが多彩です。
5. 決死隊 其の壱
独特な演歌っぽいメロディーで展開するのは犬神ならでは。ギターといい、コーラスもとても渋くて格好いいです。死体をさらってきます。途中ではハードな演奏が展開してギターの犬神情次2号のソロが聴けます。
6. 黄泉の国
独特なリズムで展開するロックナンバー。「すべて世のため人のため」ロックスターの死体の遺伝子を取り出し培養して蘇らせるという歌です。
7. 口寄せ
「口寄せ」を扱う術者と客とのやりとりがコミカルです。結構笑えます。
8. 洗脳
古い友人のインチキセールスに洗脳され、買い物しまくるという内容です。「洗脳解けたら全部ゴミ」というオチがあります。明るい感じの軽いロックンロールです。
9. 早死するのはスターの運命
ゆったりとしたテンポですが、ハードなギターサウンドが唸るナンバーです。ギターとベースのユニゾンにジミヘンを感じました。
10. 魔女狩り
ミディアムテンポでどこか古めかしいような歌謡曲風の独特のメロディで展開していきます。預言者を魔女として処刑していく内容です。
11. 屈辱の悲哀歌
「手首の深い傷が疼く」、「私は犬畜生なのか」などと歌う哀しい歌です。虐められた主人公はやがて理想郷を築くため預言者となります。アルペジオの静かな部分、ハードなギターが展開する部分と効果的に使い分けています。
12. 決死隊 其の弐
これも渋くて格好良いギターバッキングです。ロックのスターの骨のかけらを持ち帰り、人口培養してロックスターを復元します。犬神凶子の狂気の笑い声がとても良いです。
13. 理想郷
懐かしい感じのロックンロールナンバー。ロックスターを蘇らせて理想郷を築く内容です。
14. 臨時ニュース
ラジオの臨時ニュースで核兵器による人類絶滅を伝えています。
15. 鎮魂歌‾レクイエム‾ ...
重々しいイントロの後は、ピアノの伴奏を主体として核爆弾による人類絶滅を歌っています。広島、長崎の原爆に対するアンチテーゼを感じてしまいました。美しくも哀しい、激しい気持ちが描かれたロックバラードです。
16.ロックは死なズ
第一人類絶滅後の授業風景となっています。蘇生したロックスターが第二人類となっています。プロデューサーの西田昌史(元アースシェイカー)も飛び入りしてロックンロールで最後は明るくしめています。