B'z のボーカリスト、稲葉浩志のソロ・マキシ・シングル。叙情的なアルペジオと爆裂のディストーション・ギターが交錯するサウンドのなかに、ダイナミックにアップダウンを繰り返すメロディを融合させた「AKATSUKI」、静寂としたイメージをもたらす音像が印象的なミドル・バラード「静かな雨」、ピアノを中心としたシンプルなアレンジが声の良さをひきたてる「I'm on fire」など5曲が収録された本作には、日本最高のロック・ボーカリストのひとりである稲葉の魅力がびっしりと詰め込まれている。(森 朋之)
メディア掲載レビューほか
`98年発表の1stシングル「遠くまで」以来となる稲葉浩志のソロ・12センチCDシングル。ロック・ナンバー「AKATSUKI」、ミディアム・テンポのラブソング「静かな雨」、穏やかなヴォーカルと繊細なピアノのメロディーが印象的なバラード「I`m on fire」の他、「AKATSUKI」のクラブ系リミックスと、オーケストラ・ヴァージョンの全5曲を収録したミニ・アルバム的内容。
稲葉ソロの楽曲のよさとは、内面の深さ。内側の情念の炎を、言葉と旋律がうねるように描いている。 その傑作が4の「I'm on fire」。曲は静と動が混ざり合い、そのほとばしる感情はリスナーの胸を鋭くえぐってくる。稲葉という人間の強さやもろさ等、精神的な塊がぶつけられてくるナンバーだ。 また、彼の歌唱力の凄さもここで垣間見ることもできる。“I'm on fire”と歌い上げる際の“er”で、拍を伸ばしつつ、微妙な音程の上下を安定して一息で奏でてしまえる。これは流す息の量の別格さと、腹式でコントロールできる技術のなす業だ。 またその時の音色は、ただ音を発しているだけではなく、その音の中に様々な感情を込めてロングトーンしていることも感じてもらえるはず。 この特徴は、世間的にはシャウトやHR的歌唱方法のイメージが濃い稲葉浩志が、ソロ作の歌い方ではブルース的な奏で方に近いことを物語っている。 意味のない音色など必要ないといわんばかりに、音のひだに自分の気持ちをこめて奏でている。ここが僕は稲葉ソロの好きなところだ。鈍感な歌い手が多いPOPSシーンの中で、こういう細部にまで音の表現に気を配慮し、作品を仕上げてくるシンガーこそ、本物の歌い手だと思うからだ。