Amazonより
ロベール・ブレッソン監督作『ブローニュの森の貴婦人たち』は、愛と嫉妬が渦巻き、復しゅうとつぐないが交錯するメロドラマだ。ブレッソンの野心と、監督としての妥協案とのあいだに、心もとない緊張感が見え隠れしている。
美しいが嫉妬深い上流階級の貴婦人エレーヌ (マリア・カザレス) は、長年の恋人ジャン(ポール・ベルナールがいささか弱々しい役柄を演じている)の愛情をかきたてようと、心にもない別れ話を切り出す。しかし、あろうことか、あっさりと同意されてしまった。恨みをつのらせたエレーヌは、入念な復しゅうを企む。ひどく貧しい家計を助けるため、男たちを「楽しませること」までしている若いダンサー、アニエス(彼女は母親に「私なんて売春婦も同然よ!」と叫んでいる)に、ジャンが恋をするよう仕向けた。そしてエレーヌはついに、公衆の面前でジャンに恥をかかせたのだった―。
身振りは大袈裟で芝居がかっているが、台詞の口調は実に控えめだ。芸達者な俳優をそろえ、ジャン・コクトーが台詞を磨き上げた(脚本は哲学者ドニ・ディドロの小説『運命論者ジャックとその主人』からの翻案)この作品は、古典フランス映画らしく様式化された台詞と、心理劇的な色合いをもつ演技によって、はっきりと特徴づけられている。こうした特徴は、ブレッソンの後期の作品にはまったく見られないものだ。簡素なセットと筋立て、ツボにはまった演技、そして感動的で心温まる結末からも、監督の手腕がうかがえる。ブレッソン監督みずからが認めた代表作ではないが、ここでストーリーを淡々とつづっていった彼の厳格な姿勢は、第3作『田舎司祭の日記』において大輪の花を咲かせている。(Sean Axmaker, Amazon.com)
レビュー
監督・台本・脚色: ロベール・ブレッソン 原作: ドニ・ディドロ 台詞監修: ジャン・コクトー 撮影: フィリップ・アゴスティーニ 美術: マックス・ドゥーイ 音楽: ジャン=ジャック・グリュネンヴァルト 出演: ポール・ベルナール/マリア・カザレス/エリナ・ラブルデット/リュシエンヌ・ボゲール
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)