ヤクザ同士の抗争に座頭市が巻き込まれるという大筋はこれ以前の作品と共通だが、それに美貌の人質の安否を加えたのが新味と言える。また、お決まりの敵役の剣豪は本作では登場しない。
人質を演ずるのは藤村志保だ。まだ初々しいが、演技は見られたものではない。
本作でも何人かの親分が登場するが、単に悪役というだけでなく、ヤクザ同士の悲哀のようなものも醸し出している気がする。もちろん共感できるようなものではないが、小組織のトップというのも中々大変なようだ。
座頭市のキャラクターを変えられない以上、相手役に変化をつけるしかない訳で、監督や脚本家も苦労している。
ただ、こうしたヤクザの描き方というものは現代のヤクザ物の作品にも底流として流れている気がする。
時代設定や登場人物は変われど、案外変わらぬものもあるようだ。
こうした通奏低音のようなものを取り上げて分析すると、案外面白い研究になるかもしれない。個々のシリーズや監督などを超えた作品分析はそう多くはないので。