Amazonレビュー
2001年9月11日に起こった幾多の悲劇の前では、喜多郎に降りかかった災難など取るに足らないものだろう――彼は日本に向かう途中、ハワイで数日間の足止めを食らったのである。しかし、思わぬ立ち往生の体験は、この日本人ミュージシャンに世界情勢と自分の音楽の立場について思いをめぐらす機会を与えた。その結果生まれた本作は、ここ数年の喜多郎のアルバムの中でもベストを争う出来だ。
これらの出来事に触発されて、喜多郎は四国でお遍路の旅を開始した。巡礼先の88か所の寺には、それぞれ独特の響きをもつ鐘がある。喜多郎は巡礼の道すがら、これらの鐘の音を録音し、マルチCDシリーズの第1弾となる本作『The Sacred Journey of Ku-Kai』の中にうまく取りこんだ。心の思い描くままに瞑想的な情景をつむぎ出す彼は、みずから演奏するフルート、エレクトリック・シタール、胡琴(中国ヴァイオリン)、ピパ(中国琵琶)、そしておなじみのシンセサイザーを今まで以上に活躍させている。
喜多郎の作品では、大げさな終わり方や大甘のメロディーが傷となるケースがしばしばあった。本作にもそれらの傷は時おり見られるが、禅の庭の趣きを漂わせた「道を求めて Michi」や、儀式の場を思わせる「儀 Gi」(チベット人フルート奏者、ナワン・ケチョをフィーチャー)といったトラックでの彼は、より純化された魂に到達している。(John Diliberto, Amazon.com)
メディア掲載レビューほか
同時多発テロにインスパイアされ、精神的発展に対する個人的、世界的な事柄の解決を願い、希望を託したコンセプト・アルバム。各寺で鐘の音を録音し、チベットのフルート奏者や、世界中のアーティストをゲストに迎えた作品。 (C)RS