Japanese Version featuring a Bonus Dvd (Region Code 2, Ntsc) featuring 'riverdance: Live from Geneva'.
伝統的な民族舞踊であるアイリッシュ・ダンスが、1994年にヨーロッパ・ユーロ・ヴィジョン・ソング・コンテストの余興としてショーアップされ、それが大ブレイクして、瞬く間に全世界を虜にした。それが、この「リバーダンス」である。このダンスの何がこんなにも人々をひきつけるのだろうか?
リバーダンスの最大の見せ場として有名なのが、フレンチカンカンやミュージカルにも似た、横一列に並んだ若い女性が足だけで踊る、あの壮麗なシーンだ。あれこそが、古臭くて、テロの多い、寒くてじめじめした地味な島国というアイルランドの旧弊なイメージを完全に払拭し、伝統と希望に満ちた、新しいアイルランドのイメージをすっかり定着させたのである。そのポイントは、古い民族衣装をきっぱりとやめ、黒いタイツとひらひらの超ミニスカートというシャープでセクシーなスタイルを取り入れたことにあろう。あの美脚ぶりには何度見ても目が釘付けとなり、抑制された官能性満点の、ため息ものの美しさを感じる。
この拡大されたリバーダンスには、ケルト人の太陽信仰から始まり、妖精、季節の移り変わり、大飢饉によるアメリカへの大量移民、諸民族との対立や調和、故郷への帰還、といった壮大な物語が展開されており、その大河のようなスケールには圧倒される。本作はDVDとCDのセットになっているが、これはリバーダンスの素晴らしさを味わううえで、最適な組み合わせであろう。ついDVDのビジュアルばかりに目を取られてしまうが、CDで同じステージの音楽を聴くと、リバーダンスが、音楽だけとってもいかに素晴らしいかを改めて思い知らされる。
イングランドに抑圧されてきた歴史を持つアイルランド人は、監視の目を逃れるために上半身を使わず、踊っていないような顔をするために足だけで踊る、ポーカーフェイス的で屈折した民族舞踊を育ててきた。この屈折はアイリッシュ音楽にも影を落としている。あの独特の調子は、哀しいような楽しいような、明るいような暗いような、不思議なハーモニーを生み出しす。短調と長調のめまぐるしい交代、そして精妙に変化し簡単に割り切れないリズムの面白さ……。それは、聴き手の気持ち、演奏家の気持ち次第で、どちらにも受け取れるような、一種の「両義性」を持っている。
リバーダンスは、その両義性を保ちながらも、素晴らしく洗練されたポップなショーへをその伝統を転化してみせた。もちろん、アコースティックで人情味にあふれた暖かさ、そして陰翳は色濃いままに。単にアイリッシュの伝統ばかりではなく、クラシック音楽や東欧などの民俗音楽にも造詣が深く、イエーツの芝居に音楽をつけるなど演劇の世界でも活躍してきた作曲家・プロデューサー・ミュージシャンのビル・ウィーランの手腕が、そこには生きている。(林田直樹)
『リバーダンス+2-Japan Only-』(UICZ-2001)と『リバーダンス ライヴ・フロム・ジュネーヴ」(UIBZ-1001)をパッケージ化した、来日記念スペシャル価格のセット。 (C)RS