仮面を被った不死身の怪人が、人間離れした怪力を振るい、理由なき殺人を繰り返す、
という異常連続殺人鬼映画の先駆作と言えば、本作のマイケル・マイヤーズの姿が思い浮かぶ。
ハロウィンの季節を題材に住宅街で得体の知れない通り魔殺人鬼によって犠牲者が続出する。
特異なキャラ、変り種のスラッシャー映画の登場は、製作当時において斬新な衝撃を与えてくれた。
マイケルは精神病院を脱走し、逃走中に殺した死体から、はぎ取った紺色の作業つなぎを着用し、
窃盗した白いゴム製のハロウィンマスクを被り、包丁を凶器に所持する出立ちである。
これが抜群に恰好が良く、カリスマ性と共に人気を博したものだ(1978年製作)。
<カリスマ人気殺人鬼キャラとしては、「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスに続く。
そして、「13金」シリーズのジェイソンに模倣される。>
キャラクター造形の影響はハマー・フィルム「ミイラ男」シリーズを彷彿させる。
無表情で無言。歩行は遅い。襲撃時は俊敏な動作。
反撃を受けても怯まず、怪力を振い、目的行動に妥協しない。
後悔や良心も持たず。銃撃を受けても致命傷を受けても不死身。
女の身体(死体)を抱きかかえて運ぶ光景。この辺りが非常に類似している。
追加要素は、仮面の中から時折、激しい呼吸音。
興味を持った人間に執着、付き纏い、観察癖、覗き趣味、ストーカー行為あり。
遊戯的な殺し方。死体を飾る。殺した犠牲者を眺める習性あり。車の運転が上手い。
何を考えているか、分からない不可思議な魅力等々。
見様によっては、頓珍漢なサイコ・キラーであるが、カーペンターのキャラ演出が秀逸なのだ。
幼少期に変貌してから一言も喋らず、行動を起こす時期(成人の身体になる)までじっと耐え、
性的魅力のある若い女に興味を示し、獲物を観察、隠れながら様子を眺め、機を窺がって殺す。
仮死状態から、死んだ振りをして相手の油断や隙を誘う狡猾、老獪な面もある。
邪魔な周囲の人間(特に男は瞬殺)を惨殺しながら、本命を狙って来る。
包丁が好きだが、身の回りの物を気分で使う。
暗闇から「ジワッ」と浮かび上がる白いマスク。唐突に出現しては俊敏な動きで急襲する。
標的の居る窓際を外庭から凝視する光景など、暗闇や影(幻影)や風景が活かされた映像と、
音楽効果(ショック・シーンに合せて衝撃音を鳴らす)を巧みに駆使した作風である。
シンプルな恐怖設定ながらも、殺しても殺しても息を吹き返す(復活する)という、
クライマックス場面の不死性は、古典的な怪奇モンスター「ドラキュラ」の様でもある。
そして、ドラキュラ伯爵とヘルシング教授の様な宿敵関係も感じられる。
主治医のルーミスを避けるマイケルと、執念の鬼となり脱走患者マイケル追跡に命を懸ける
ルーミス医師の関係は、他のカリスマ殺人鬼物には無い物語設定である。
ホラー映画雑誌等の作品紹介で、本作をスプラッター映画のジャンルに掲載する場合がある。
本作は決してスプラッター映画では無く、スラッシャー系のサスペンス・ホラーである。
殺人が起こる迄を入念に(焦らしながら)淡々とサスペンスタッチで描き、マイケルの凶行を瞬時に
炸裂させる巧妙な演出効果が特徴。またシンプルな構成の中に計算された着想力が光る。
劇場公開版が出るまで国内ソフトは割と時間が掛かった。最初のVHS版は殺人場面のどれもが一部カットされている。
その代わりアメリカのテレビ・バージョン向け用の追加撮影場面が挿入されていたが、不完全燃焼的な商品だった。
本商品の発売後、劇場公開版と追加撮影が合体した Extended Editionも発売されているが、オリジナルが傑作であろう。
国内では、「ハロウィン」と「ブギーマン」という名詞、この二つの言葉を多く広めた作品でもある。
上記の事柄から個人的に大好きな殺人鬼映画である。