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生まれは1908年で、初監督作はサイレント時代の1931年。そして現在もなお、旺盛な創作意欲が衰えることなく作品を撮り続ける。まさに世界の巨匠と言う名にふさわしい、ポルトガルのマヌエル・ド・オリヴェイラ。幅広いジャンルを手がけ、そのひとつひとつが珠玉のようなきらめきを放っている。
カンヌ映画祭で審査員特別功労賞を受けた1990年の『ノン、あるいは支配の虚しい歴史』は、ポルトガルの戦争の歴史を軍人たちが語っていくドラマ。戦いの記憶が語り手たちの現在と重なり、未来への警鐘になっていく。戦争の虚しさをアイロニックに訴える一作だ。
『神曲』(1991年)は精神を病み、療養施設で入院生活を送る患者たちが「罪と罰」など文学作品を演じる異色作。オリヴェイラ作品で多用される「カメラの前で演劇を演じる」というテーマが前面に押し出され、現実と作りごとの境界を曖昧にしていく。監督自身も俳優として顔を出しているのが貴重だ。
『家宝』(2002年)はポルトガルの美しい田園地帯を背景に、屋敷の相続人と結婚したヒロインが周囲を翻弄していく。全編に漂う謎と悪の香りには、当時94歳とは思えない新鮮な才気が満ちあふれている。
これらはともに秀作でありながら、90年代以後の3作で、これだけでオリヴェイラの作家像を語るのは到底不可能。しかし断片に出会うことで、深く広い世界が存在することを知らしめる。それもオリヴェイラの魔力だろう。(斉藤博昭)
レビュー
[1]製作: パウロ・ブランコ 監督・脚本・台詞: マノエル・ド・オリヴェイラ 撮影: エルソ・ロク 音楽: アレハンドロ・マッソ 出演: ルイス・ミゲル・シントラ/ディエゴ・ドリア/ミゲル・ギレルメ/ルイス・ルカス/レオノール・シルヴェイラ[2]監督・脚本: マノエル・ド・オリヴェイラ 出演: マリア・デ・メディロス/ミゲル・ギレルメ/ルイス・ミゲル・シントラ/マリオ・ヴェイガス/レオノール・シルヴェイラ/マリア・ジョアン・ピルシュ[3]製作: パウロ・ブランコ 監督・脚本・台詞: マノエル・ド・オリヴェイラ 原作: アグスティナ・ベサ=ルイス 共同脚本: ジャック・パルジ/ジュリア・ブイゼル/アントニオ・コスタ 撮影: レナート・ベルタ 出演: レオノール・バルダック/レオノール・シルヴェイラ/イザベル・ルト/リカルド・トレバ/イヴォ・カヌラシュ/ルイス・ミゲル・シントラ
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)