クラフトワークの元メンバーであるカール・バルトスおじさんは、本作以前にもソロを作っていました。これが初めてのソロではないのです。それは置いておいて、このCDですが、素直に「素晴らしい」と思えるのです。ほぼ同時期にリリースされたクラフトワーク「ツール・ド・フランス」も十分に楽しめる内容でしたが、聞いていると、ああ、やはりクラフトワーク活動において、カールおじさんの位置は重要だったのだなあ、と思ってしまいました。このソロを聴いて。
クラフトワークを支えたポップ性は、全てとは言わなくても8割がたは、カールおじさんが担っていたのだなあと、本作「コミュニケーション」(ボーナス入り)を聴いていて、感じた。クラフトワークの最新作はあれはあれでいいのだが、半面「マン・マシーン」「ヨーロッパ特急」「コンピューター・ワールド」などにあったポップ性はもはや求められない。カールが脱退してしまったからだ。
だいぶ話がそれたが、2008年の今でも本作「コミュニケーション」のポップ性は通用するだろう。それを物語っているのが2曲のリミックス。ボーナストラックとして収録されているが、いかに現代のテクノの担い手にカールおじさんの瑞々しい感性が受け継がれているかがうかがえる。本作を作ったのが50男のドイツ人だとは、ロック・ポップス初心者には信じられないのでは。それくらいクールなテクノ。
昔、カールおじさんはとある日本の雑誌のインタヴューに応じて「一番好きなアーティストは?」との問いに「ザ・ビートルズ」と、即答していました。今の若手ロックミュージシャンにもビートルズ魂は受け継がれていますが、カールおじさんも例外ではなかったのですね。
ちょっと、収録曲数に対し、「値段が高い」と感じた方もいらっしゃるでしょう。ですが些細なことです。この、50代の、ドイツ人が作った、「究極のテクノポップ」を味わえるのですから、買って聴いてみる価値は十二分にあるのです。