Amazonレビュー
圧倒的なデビュー・アルバム『Songs in A Minor』で一躍人気者となったアリシア・キーズだが、いつまでもそこに留まっているような彼女ではなかった。今回はオールド・スクール・ソウルだけでなく、今という時代に果敢に踏み込んだ内容となっている。ファンキーで息をもつかせぬ「Heartburn」では、ティンバランドを案内役にしてアンセミックなヒップ・ホップに挑戦しているほどだ。まるで休むことを知らないチアリーダーのように、キーズは奇抜なユーモアのセンスを爆発させる。彼女がこんな一面を持っていたとは驚きだ。また、ビートの効いた「Karma」での軽やかな歌声は、この元気の出る思索型ポップに奇跡的な響きをもたらしており、不安を抱く世界中の女性たちに希望を与えるだろう。そう、いずれ何もかもうまく行くのだ――時には「Samsonite Man」のように挫折することもあるが。
刺々しい物腰とジャジーなボーカル・スタイルにもかかわらず、キーズは昔ながらのR&Bと過去への旅を忘れてはいない。というわけで、グラディス・ナイトの「If I Was Your Woman」のリメイクが収録されているが、本作には不要なトラックだったかもしれない。さらにキーズは、陽気でドラマティックな「You Don’t Know My Name」を新たなスタイルでよみがえらせている。そのエネルギーとテンションは今にもはちきれそうで、ライフタイム・チャンネル(女性向け番組の専門局)のテレビ映画にぴったりだ。キーズなら見事にウェイトレス役をこなしてくれるだろう。
それにしても、『The Diary Of Alicia Keys』(「アリシア・キーズの日記」の意)というアルバム・タイトルはいかがなものか。ファンが本作を聴いても、このとらえどころのない歌姫のことが以前より分かるようになるわけではない。歌詞も告白的というよりは物語的な形式で書かれている。実際、タイトル・トラックの「Diary」は彼女の精神生活を掘り下げるのではなく、長距離恋愛をテーマにしているのだ。この曲の中で、キーズは愛する相手に向かってこう言い切っている――「あなたの秘密は誰にも話さない / あなたの秘密は私が守る / いつまでも秘密にしておくわ / 私はあなたの日記のページみたいなもの(I won’t tell your secrets / Your secrets are safe with me / I will keep your secrets / Just think of me as the pages in your diary)」。(Jaan Uhelszki, Amazon.com)