去年の冬,古びた花屋の店内で底冷えの寒さに震えながら聴いたライブの音が,再び聴く者に過去の映像を甦らせる。そのイメージは聴く人が経験した人生の量と質が多く,高いほど深みを増していくのだ。パリ,ブタペスト,イスタンブール,モロッコ‥‥ママミルクとともにどこへ旅立つのか,それはあなたの過去の人生にかかっている。
わたしの場合,それはベネツィアの冬のサンマルコ広場。アドリア海の冷たい風が訪れる人を無口にし,広場に面したカフェの太ったカマレ-ロは大アクビをしている。また裏通りの寂れたトラットリアでは店内に客がいるにも拘らず片隅でまかないのパスタを食べている少年が食事の間中,女主人に怒鳴り散らされている‥‥
さてあなたはこれからどんな旅をするのでしょう?なまめかしく,それでいて軽やかなアコ-ディオンとコントラバスが織りなす調べに身を任せて目を閉じてみれば‥‥
Bon Voyage!