私は「祈り」を聴いてヘイリーの歌声に魅せられたのだが、本作はその10年近く前に発表された、彼女にとっては世界デビューとも言える作品。題名通り、「Pure」で伸びやかな歌声が聴く者の心を捕える。彼女の畑であるクラシックをモチーフとした楽曲が少ないのが特徴で、主にポピュラー・ソングと彼女の出身地のニュージーランドの先住民であるマオリ族のトラディショナル・ソング(子守唄(「祈り」にもありました)を含む)をカバーしている。このためか、何時もの透明感と奥行きに加え、全体的にリラックスした雰囲気が漂っている。また、日本版のボーナス・トラックとして、「Mary Did You Know」及び彼女を日本で一躍有名にした「Amazing Grace」の2曲が入っているのはお得感がある。
マオリ族のトラディショナル・ソングの2曲のカバーは特にリラックス感と優しさを感じさせ、彼女が子守唄を中心としたアルバム「やすらぎのハッシャバイ」をリリースした事由が良く窺える。主にバラード系のポピュラー・ソングのカバーも勿論巧みにこなしているが、個人的にはポップ感が強い「Heaven」のカバーが気に入った。クラシック畑の彼女には、静かなバラード(もシミジミとした情感を感じさせるが)よりも本曲のような軽くて弾性に富んだ楽曲のカバーが意外に奏功するという印象を持った。これを推し進めたのが、2つの書き下ろし曲の「Best of Your Heart」及び「Across the Universe of Time」で、曲の全体構成が起伏に富んでいて、彼女の新しい可能性を引き出している。両曲共に本作の代表曲と言って良い佳曲。そして、何と言っても驚きはあのケイト・ブッシュの「Wuthering Heights(嵐が丘)」をカバーしている点である。エキセントリックと呼ぶに相応しいケイト・ブッシュの代表曲をヘイリー(当時、15才)がどうこなしているか、本作の聴き所の1つである。
収録曲は、マオリの伝承歌から、クラシックをモチーフにした楽曲、外部ライターの書き下ろしなど。 ほのかな悲しみと子守唄のような安堵感を与えるフォーレ(2)、天上の美しさと言えるほど美しいヴィヴァルディ(4)、 Hayleyの清々しい声をゆったりと堪能させてくれる(6)、物悲しい調べの(7)、哀愁を帯びたメロディが爽やかに吹き抜ける(11) Kate Bushの名曲カバー(13)。。。などなど、聴き入ってしまいます。