本編を全巻繰り返し見て、外伝を順に見ていってこの巻にたどり着くと、
もちろん絵も音楽も話の展開も見るに耐えないものであるのは
みなさんが仰しゃる通りだと思いますが、
同盟軍のシドニー=シトレ指揮による第5次イゼルローン攻防戦が
映像化されているのは価値があることのように感じました。
…本編と異なり、イゼルローン要塞が液体金属で
覆われていないから成立する戦術でしたが。
ラインハルトが幼少期からダイジェストで描かれているのも、
初めて見る人には背景が理解できて悪くないのでしょう。
…銀河英雄伝説のアニメをまずこの作品から見る人は
かなり変わった人だとは思いますが。
あまりの悪評に vol. 9 奪還者を先に見たのですが、
いきなりラインハルトが中佐になっていて、
レンネンカンプともすでに見知った間柄のようであったので、
この巻も見てみたいと思いましたが、
ラインハルトが少佐に昇進する物語は描かれていないのですね。
ストーリーの補完という意味でも
あまり意味がある巻ではありませんでしたが、
59分とやや短めなので、
ひどい部分にも耐えられる気がしました。
ともあれ、少佐様は偉いので
下級兵卒はもちろん尉官クラスでも
あのような態度は取らないと思います。
vol.6『叛乱者』の中尉の時代ならギリギリ理解できますが。
その辺まで圧縮して一つの映画にしなければいけなかった時点で、
いろいろ無理があったのですね。
と、頑張って擁護しようとは思ったのですが、
イゼルローンのような要の戦闘地で
同盟軍との最前線のさなかに武勲を挙げて頭角めざましい少佐を、
前線を知らない階級だけ大佐である貴族が、
営倉に入れて尋問するのは無理がありました。
レンネンカンプの言う通りです。
余計な口出しも多く、前線の砲火に脅える様も情けなく、
こんなのに頼らざるを得ないベ侯爵夫人も
いよいよ手駒が無くなってきているのが感じられました。
やり口も稚拙で、
『白銀の谷』ではヘルダー大佐が事を表に出さないよう、
細心の注意を払っていたのとは大違いでした。
一応正史として扱われている以上、見ておかないと落ち着かない人、
恐いもの見たさの人が覚悟して見れば全く無価値ではない、
というくらいの作品だと思います。