躍動感ある曲もあるなか、落ち着いた雰囲気にさせるサウンドも含まれた好盤。
しばらくジャズを聴き込んで感じるのは、実力あるアーティストでなければ落ち着いた曲など演奏できないということである。
編成はピアノトリオを基本に、弦楽や尺八が入ってくる。ニューヨークに在住していたピアニストが、一転して「和」をテーマにした本アルバム。おぼろ月夜など、尺八の音が聞こえてきた途端、「粋なジャズ」とは別の世界に引きまれていく。フルートなどとは違ったはかなさが感じられる。
カゴメカゴメの、懐かしいメロディが聞きやすい。春咲小紅や島唄などおなじみのメロディが、あなたの耳にもよくなじむことと思う。
ジャズファン以外にも親しみを感じられるアルバムに仕上がっていると思う。
それでいて、ジャイアントステップや、ドナ・リーのように、ジャズファンの方が親しみのありそうな曲も含まれている。
東京狂詩曲も迫力に富んだオリジナル曲で、アキコ・グレースを知らない人には、楽しめるのではないだろうか。「悠久の道」も弦楽をバックに、スケールの大きさが感じられる。まるで何かの紀行番組のバックグラウンドに使えそうな、題名にある通り、「悠久ってこんな感じだろうか?」ということに思いを馳せるような曲である。うっかりジャズアルバムなんだ、ということを忘れてしまうそうである。
お奨めはドナ・リー。チャーリー・パーカーの愛奏曲をブラスなしで演奏。藤原清登のベースが生み出すビートが曲に緊張感を与えている。彼のファンにはぜひ一度本作品を視聴されては如何だろうか。