トルコ出身で、作曲家としても活動しジャズも手がけるファジル・サイさんによる演奏です。
ファジル・サイさんは、曲全体の構成に配慮した上での時間制御に優れていると思います。チャイコフスキー・ピアノ協奏曲では、第1楽章の冒頭では後ノリ気味に弾いて曲の推進を抑え、後半ではグイグイと曲を引っ張って行きます。これによって、「冒頭の美しい旋律部分に感動すれども、その後で中だるみ感を持つ」ことを防いでいる様子です。
また、音を出すタイミングについては、例えば、チャイコフスキー・ピアノ協奏曲第3楽章のエンディングも、駆け上がるピアノとオケがぴたりと一致して、とても格好良いです。
さらには、曲全体を見渡して各フレーズの役割を考慮した上で、細部の表現が行われており、あたかも全体の構造から細部の装飾まで良くデザインされた、造形芸術のような印象を受けました。チャイコフスキー・ピアノ協奏曲を違った側面から聴いてみるには、面白いアルバムだと思います。