Amazonレビュー
偏執的な17世紀の清教徒になったつもりで聴いてみれば、本作『They Were Wrong, So We Drowned』は、魔女狩りの愚かしさを気づかせてくれる“コンセプト・アルバム”(もちろん、当時こんな言葉はなかったが)になるだろう。NYエレクトロ・パンク界の脱構築主義集団ライアーズは、ドイツの異教徒的な伝説“ワルプルギスの夜”(春が訪れ、緑が冬のつらさを打ち負かし、古代宗教の崇拝者たちがハルツ山地に集まって非キリスト教的な儀式を繰り広げるという夜)の領域に踏み出した。つまりこれは、ゲーテの生んだファウスト博士が、フォールやソニック・ユースやパブリック・イメージ・リミテッドに出会うのと同じぐらい意外な組み合わせであり、何とも型破りな出来事なのだ。
一聴してみると、不気味さ満点。ドラムがせわしなく駆け抜け、雷が鳴り、猫たち(魔女のしもべ)が鳴き、キーボードが歪んだスティロフォンのように金切り声を上げる。アンガス・アンドリューが何度となく上げる苦しげな叫びは、憎悪のマントラと化して聴く者の耳を捕らえる。怖がりのリスナーは、聴く前に魔除けとして牛の心臓を用意しておくことが望ましい。頭の柔らかいリスナーは、この音楽にはリベラルさ、勇敢さ、激しい怒りが鮮やかに脈打っていると気づくだろう。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)