作品の概要
コメディー、ホラーを同居させつつも社会派として国の抱える問題まで切り取ってしまう。
しかもヒューマンドラマでもあるという、なんというかもうすごい欲張りマン映画。
描写について
昭和っぽい音の使い方やゆっくりとしたどこか懐かしい描き方は、岡本喜八や伊丹十三作品を彷彿とさせ、とても洗練されている。
登場人物も肝心なシーンで余計なことを喋らず、その横顔や余韻で感情を推測させられ、絶妙な演出に常に登場人物たちの胸中を想像させられ続ける。
テーマ、モチーフについて
主人公のモラトリアムからの卒業(大学教授になって大人になること)を、まんま犬の死(パトラッシュの死)と重ねて描く。
女の子2人は、そのパトラッシュたちを天国に連れて行く天使の役割。(最後の山中でのライト照らし~は異界からのメッセージ的な描写であり、息苦しい行き詰まった韓国社会から自由になるには目の前の善意や友情を信じてシンプルに生きるんだよみたいなメッセージもあると思う)
他のサイコパスっぽい2人は社会問題と照らし合わせて語ることもできるんだろうけど、シンプルに犬鍋を疑問なく食べてた世代との世代間の隔たりを描いてるのかなと思った。
総評
面白いし怖いし女の子はカワイイし話がどう転がるのか気になるし韓国のモラルやマナー、文化や時代についても考えさせられるしで、見終わったときに「はぁ~~~~~! 映画見たぁ~~~~~!」と数年ぶり、いや下手したら数十年ぶりに腹の芯から満足できた作品。
「社会は怖いところであり、他人は怖いものであり、フィジカルは絶対だということ」見終わった瞬間はこれくらいしか考えられないくらい呆然としてたんだけど、時間が経てば経つほど「あそこはこうだったのかな? ここはこうだったのかな?」と次々考えさせられる。
そしてなにより、撮影も音響も演出もいいけど、やっぱり脚本がずっっっば抜けてる。
天才の描いた脚本。
まさに見事としか言いようがない。ブラボー。
ほえる犬は噛まない [DVD]
フォーマット | 色, ワイドスクリーン |
コントリビュータ | ペ・ドゥナ, ポン・ジュノ, イ・ソンジェ |
言語 | 韓国語 |
稼働時間 | 1 時間 50 分 |
【まとめ買いフェア開催中】よりどり2点以上で5%OFF
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メーカーによる説明
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価格 | — | ¥2,873¥2,873 | — | — |
製品仕様 | Blu-ray | DVD | DVD | DVD |
発売日 | 2020/7/22 | 2020/7/22 | 2014/6/27 | 2004/5/2 |
商品の説明
レビュー
犬を飼う人、殺す人、食べる人、捜す人。巨大な集合住宅を舞台に“犬”を巡って巻き起こるちょっぴりシニカルなドタバタ劇。主人公の大学講師の立場が、犬を殺す人から飼う人、捜す人へと変化していく多分に戯画的なドラマ展開を中心に、気まぐれな善意・突然芽生える悪意などさまざまな感情や関係性が錯綜する市井の人々の姿を、小気味よくスタイリッシュに活写する。そこには絶対的な善人も悪人もいない。ただ“生の営み”があるのみ、というわけだ。そして、クルミや車のサイドミラーなど小道具、ジャズやアニメ『フランダースの犬』のテーマなど音楽の使い方。後頭部のショットや走る姿などイメージの反復。マンガ的なコマ割り、ズーム、スローモーション。スリリングな編集術。精緻かつ巧妙な演出技術が、リアル感を補強する。『殺人の追憶』の高い完成度がフロックでないことが、この長編デビュー作を観れば納得できる。ただ愛犬家には、少々酷かもね。 (山縣真矢) --- 2004年07月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
製作総指揮: チャ・スンジェ 監督: ボン・ジュノ 撮影: チョ・ヨンギュ 音楽: チョ・ソンウ 出演: ベ・ドゥナ/イ・ソンジェ
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- アスペクト比 : 1.78:1
- 言語 : 韓国語
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4982509312678
- 監督 : ポン・ジュノ
- メディア形式 : 色, ワイドスクリーン
- 時間 : 1 時間 50 分
- 発売日 : 2004/5/2
- 出演 : ペ・ドゥナ, イ・ソンジェ
- 販売元 : タキ・コーポレーション
- ASIN : B0001N1QSQ
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 113,191位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年1月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ポン・ジュノ監督作品を見るのはまだ3作目です。(「母なる証明」「パラサイト」に続いて)
偉大なる監督が、初めても長編作品をどんなふうに作ったのだろうとワクワクしながら見ました。
いろんなエピソードが散りばめられ、最後どういう着地点になるのか気になりながらも、細かな演出が素晴らしく、脚本も素晴らしい。ラストなんか最高ですね。アレの光の反射!!
圧倒されながら拝見しました。
これがつまんないという人は、どんな映画が好きなんだ??というくらいの。
最後まで目が離せない。こうやって、着地するのか!!
大傑作です。
1回見るだけではもったいない映画だなと思いました。
犬好きには辛い映画ですが、だからといって残酷なシーンが出てくるわけではありません。残酷なことはやっているけど、じゃあ鶏や豚・牛は良いのか....って感じにも思えてくるわけです。
しいて言えば、天才ぶりが見えすぎているかも。のちの作品の方が、ちょっと力が抜けたような、こなれ感はありますね。
偉大なる監督が、初めても長編作品をどんなふうに作ったのだろうとワクワクしながら見ました。
いろんなエピソードが散りばめられ、最後どういう着地点になるのか気になりながらも、細かな演出が素晴らしく、脚本も素晴らしい。ラストなんか最高ですね。アレの光の反射!!
圧倒されながら拝見しました。
これがつまんないという人は、どんな映画が好きなんだ??というくらいの。
最後まで目が離せない。こうやって、着地するのか!!
大傑作です。
1回見るだけではもったいない映画だなと思いました。
犬好きには辛い映画ですが、だからといって残酷なシーンが出てくるわけではありません。残酷なことはやっているけど、じゃあ鶏や豚・牛は良いのか....って感じにも思えてくるわけです。
しいて言えば、天才ぶりが見えすぎているかも。のちの作品の方が、ちょっと力が抜けたような、こなれ感はありますね。
2022年4月28日に日本でレビュー済み
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ストーリー自体は可もなく不可もなく
2022年3月28日に日本でレビュー済み
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日本映画では考えられないシーンがあり、犬好きの人は見ない方がいいかも。
犬を食べる国の映画だからと理解しながら最後まで見たが、退屈はしなかった。
日本映画だと、こういう悪いことをしたら最後は捕まるだろうな・・・
犬を食べる国の映画だからと理解しながら最後まで見たが、退屈はしなかった。
日本映画だと、こういう悪いことをしたら最後は捕まるだろうな・・・
2021年11月11日に日本でレビュー済み
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ヒョンナムは前を走るユンジュが犬を屋上から落とした犯人であると分かったことで立ち止まるが、罪を告白したウンシルの靴が片方ないと答え、その罪を追及することをしない。ヒョンナムはユンジュの罪(犬殺し)に気づいたが、靴がないととぼけることでそれを許したのである。前回は追う側と追われる側という立場だったが今回はヒョンナムと一緒に走っていると表現したユンジュはヒョンナムへの愛を遠まわしに告白する一方で、彼女の赦しよりも犬を殺し学長に賄賂を贈るような自分のエゴイズムを裁いてもらいたかったように思う。最後のシーンでユンジュがカーテンを閉めるように言い闇の中でうつむくシーンはようやく手にした「教授」というポストが彼にとって理想とは異なっていた現実とその中で葛藤する彼自身の孤独を示唆している。一方、テレビには映らなかったものの友人のチャンミと山の中をハイキングするヒョンナムには最後に光がさしており、チャンミが蹴り壊したサイドミラーで光を反射させるのは、テレビではカットされた彼女たちの良心がまだ健在である証拠だろう。タイトルはなかなか秀逸で「ほえる犬」とはおそらくヒョンナムを指しており、彼女が犯人であるユンジュを噛まずに教授にしたことを示している。
2022年3月20日に日本でレビュー済み
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ネタバレあり
初レビューです(犬と15年間暮らしていた者です)。
韓国その他の国では今もそういう習慣が残っているようですが、
現代日本では、飼い犬は家族の一員であって、食材ではありません。
他人が飼っている犬を殺して食うことは、犬食文化の国でも犯罪でしょう。
なのに、日本語レビユーの多数は高評価、自分には理解できません。
それでも、きっと最後には納得できるオチがあるのだろうと予想して
残酷シーンも我慢して観ましたが、犬殺しにお咎め無しでした。
この映画が伝えたかった事は何だったのでしょうか?
監督や俳優の演技を誉める声もありますが、自分には無理です。
内容と結末に共感できる部分がなく、気分の悪さだけが残りました。
初レビューです(犬と15年間暮らしていた者です)。
韓国その他の国では今もそういう習慣が残っているようですが、
現代日本では、飼い犬は家族の一員であって、食材ではありません。
他人が飼っている犬を殺して食うことは、犬食文化の国でも犯罪でしょう。
なのに、日本語レビユーの多数は高評価、自分には理解できません。
それでも、きっと最後には納得できるオチがあるのだろうと予想して
残酷シーンも我慢して観ましたが、犬殺しにお咎め無しでした。
この映画が伝えたかった事は何だったのでしょうか?
監督や俳優の演技を誉める声もありますが、自分には無理です。
内容と結末に共感できる部分がなく、気分の悪さだけが残りました。
2022年7月26日に日本でレビュー済み
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パラサイト、母なる証明、哭声、グエムル など、ジャンル超えた作品を提示するボン・ジュノ監督の初期作品です。
ストーリーが読みづらい展開ではあるが、どこかぼんやりとした印象でしかなく、結局とのころ、大学教授になるには賄賂を積まなければならないといった社会性メッセージが冒頭から最後まで語られている。
エンターテイメント(映画)を通すことでしか本音のメッセージを伝えることができないからです。
作品の印象は、乱雑な作りでしかなく、もう少しまとまりというか、映画としての面白さや、タイトルとの関連性を見せて欲しく、ただダラダラとした印象が残る作品に仕上がっているのが残念。
ストーリーが読みづらい展開ではあるが、どこかぼんやりとした印象でしかなく、結局とのころ、大学教授になるには賄賂を積まなければならないといった社会性メッセージが冒頭から最後まで語られている。
エンターテイメント(映画)を通すことでしか本音のメッセージを伝えることができないからです。
作品の印象は、乱雑な作りでしかなく、もう少しまとまりというか、映画としての面白さや、タイトルとの関連性を見せて欲しく、ただダラダラとした印象が残る作品に仕上がっているのが残念。
2020年6月21日に日本でレビュー済み
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キュートだけどビター、シニカルだけどスタイリッシュ、ニヒルだけど小粋で、おしゃれだけどアイロニカル―――
韓国映画の一つの頂点を極めた傑作と言っても過言ではない。とりわけ鍋料理が得意な食いしん坊の初老警備員が飄々としていて、じつに良い味を出している
現代は「フランダースの犬」。果たしてポン監督は宮崎駿の大ファンだとの由。だが二人の作家性には大きな差異がある。もとよりそこに言及すれば一大論文になってしまうだろうが、端的な視聴後の感覚の差異についていえば宮崎作品は幕引き時のカタルシスに重点を置いているのにたいし、ポン作品は観客を奇妙な不安の中に放り出すのを躊躇しない所だろう
いずれにせよ、方向性の違いは観客には重要ではない。重要なのはクオリティであり、その点で宮崎駿に失望の不安がないのと同様、ポン監督の作品にも失望の不安はない
さて。前置きはこれくらいにしてあらすじ(ネタバレあり。未見の方はスルー推奨)を紹介すると、ペ・ドゥナ演じる本作ヒロインのヒョンナムは、商業高卒の地味な女の子。マンションの管理事務所で経理を担当しているが、面白みの無いデスクワークに身が入らず夢想にふけりがち
ある日。何気なく見ていたテレビで、銀行強盗を肉体言語で撃退する女性銀行員のニュース動画(実際のニュース映像)に感化された彼女は「自分も手柄を立てれば表彰され有名になれるかも?」という、稚気満々の妄想に駆られる。そんな彼女が、マンション内で勃発した飼い犬の連続失踪事件に出くわすことになる
いっぽうイ・ソンジェ演じるもう一人の主人公ユンジュは、当のマンションの住人。教授職のポストをめざしてあがく、学者の卵。うだつのあがらない彼は妊娠中の妻からも冷遇されているが、人生を打開しようにも昇進のためには大学の実力者に袖の下を渡さねばならず、しかもあいにく金策のあては無い。八方ふさがりの身の上で、鬱屈だけが蓄積していく
そんなかれの神経を刺激していたのが団地内にけたたましく鳴り響く、他家の飼い犬の吠え声であった。ある日、かれは元凶とおぼしき犬に魔手を伸ばすのだが……
物語はこの二人を軸に展開していく。よりによってユンジュの細君が犬を飼いだしたことを契機に、二人に接点が生じるのだ。しかも本作はいわゆる定石のカタルシスを、あくまでも否定する。鬼才ポン・ジュノは「善玉ヒロイン」ヒョンナムには、夢想の中での栄冠しか与えない
事件解決の手柄を立てて喝采を浴び紙吹雪の舞う歓喜の瞬間は、ついに彼女の脳内にしか存在しない幻影で終わる(しかもそれがまた、非常に余韻が残る演出ときている)。いっぽう「悪玉」ユンジュはといえば、瓢箪から駒の幸運でまんまと救済を勝ち取ってしまうのだが根は憎み切れない小心者であり、良心の呵責に耐えかねてヒョンナムに、飼い犬失踪事件の犯人は自分であることのヒントを与えようとさえする
だがすでにユンジュを信じ切っているヒョンナムに、ユンジュのメッセージは届かない。ユンジュは、ありついた成功とは裏腹に奇妙なほろ苦さをも味わい続けることになるのだ。かくして一瞬交錯した二人の人生は、それぞれの方角に向かう。ヒョンナムはといえば犬の失踪事件をめぐる、徒労にみちた一連の行動がもとでリストラの憂き目を余儀なくされており、それでいて奇妙な解放感を味わいながら相棒の友人とともに、約束のハイキングへと出かけることで物語の幕が下りる―――
ラストシーンでヒョンナムが観客に向けて、手にした鏡(それはちょっとした犯罪の戦利品である)で陽光を浴びせる行為は、いかなる謎かけなのであろうか? ポン・ジュノの手の内に乗せられているのは判っているし安易な解釈と言われるのも百も承知ながら、必死で何かをやろうとあがきながら何事もなせなかったヒロインから「今度はあなたの心の中にある、(そして、おそらくは実現しないであろう)衝動を、照らしてごらん?」とバトンタッチされたような気がして、得も言われぬ奇妙な、身につまされる感覚を覚えてしまうのである
韓国映画の一つの頂点を極めた傑作と言っても過言ではない。とりわけ鍋料理が得意な食いしん坊の初老警備員が飄々としていて、じつに良い味を出している
現代は「フランダースの犬」。果たしてポン監督は宮崎駿の大ファンだとの由。だが二人の作家性には大きな差異がある。もとよりそこに言及すれば一大論文になってしまうだろうが、端的な視聴後の感覚の差異についていえば宮崎作品は幕引き時のカタルシスに重点を置いているのにたいし、ポン作品は観客を奇妙な不安の中に放り出すのを躊躇しない所だろう
いずれにせよ、方向性の違いは観客には重要ではない。重要なのはクオリティであり、その点で宮崎駿に失望の不安がないのと同様、ポン監督の作品にも失望の不安はない
さて。前置きはこれくらいにしてあらすじ(ネタバレあり。未見の方はスルー推奨)を紹介すると、ペ・ドゥナ演じる本作ヒロインのヒョンナムは、商業高卒の地味な女の子。マンションの管理事務所で経理を担当しているが、面白みの無いデスクワークに身が入らず夢想にふけりがち
ある日。何気なく見ていたテレビで、銀行強盗を肉体言語で撃退する女性銀行員のニュース動画(実際のニュース映像)に感化された彼女は「自分も手柄を立てれば表彰され有名になれるかも?」という、稚気満々の妄想に駆られる。そんな彼女が、マンション内で勃発した飼い犬の連続失踪事件に出くわすことになる
いっぽうイ・ソンジェ演じるもう一人の主人公ユンジュは、当のマンションの住人。教授職のポストをめざしてあがく、学者の卵。うだつのあがらない彼は妊娠中の妻からも冷遇されているが、人生を打開しようにも昇進のためには大学の実力者に袖の下を渡さねばならず、しかもあいにく金策のあては無い。八方ふさがりの身の上で、鬱屈だけが蓄積していく
そんなかれの神経を刺激していたのが団地内にけたたましく鳴り響く、他家の飼い犬の吠え声であった。ある日、かれは元凶とおぼしき犬に魔手を伸ばすのだが……
物語はこの二人を軸に展開していく。よりによってユンジュの細君が犬を飼いだしたことを契機に、二人に接点が生じるのだ。しかも本作はいわゆる定石のカタルシスを、あくまでも否定する。鬼才ポン・ジュノは「善玉ヒロイン」ヒョンナムには、夢想の中での栄冠しか与えない
事件解決の手柄を立てて喝采を浴び紙吹雪の舞う歓喜の瞬間は、ついに彼女の脳内にしか存在しない幻影で終わる(しかもそれがまた、非常に余韻が残る演出ときている)。いっぽう「悪玉」ユンジュはといえば、瓢箪から駒の幸運でまんまと救済を勝ち取ってしまうのだが根は憎み切れない小心者であり、良心の呵責に耐えかねてヒョンナムに、飼い犬失踪事件の犯人は自分であることのヒントを与えようとさえする
だがすでにユンジュを信じ切っているヒョンナムに、ユンジュのメッセージは届かない。ユンジュは、ありついた成功とは裏腹に奇妙なほろ苦さをも味わい続けることになるのだ。かくして一瞬交錯した二人の人生は、それぞれの方角に向かう。ヒョンナムはといえば犬の失踪事件をめぐる、徒労にみちた一連の行動がもとでリストラの憂き目を余儀なくされており、それでいて奇妙な解放感を味わいながら相棒の友人とともに、約束のハイキングへと出かけることで物語の幕が下りる―――
ラストシーンでヒョンナムが観客に向けて、手にした鏡(それはちょっとした犯罪の戦利品である)で陽光を浴びせる行為は、いかなる謎かけなのであろうか? ポン・ジュノの手の内に乗せられているのは判っているし安易な解釈と言われるのも百も承知ながら、必死で何かをやろうとあがきながら何事もなせなかったヒロインから「今度はあなたの心の中にある、(そして、おそらくは実現しないであろう)衝動を、照らしてごらん?」とバトンタッチされたような気がして、得も言われぬ奇妙な、身につまされる感覚を覚えてしまうのである