ミニモニ。主演の連続ドラマ。グリム童話「ブレーメンの音楽隊」を自由に翻案した全12回の3部構成(現代・1974年・1949年)で、謎めいた洋館を舞台に、異なる時代を生きた3人の少女を結ぶ不思議な絆を描く。
第2部・1974年篇は辻希美が主演。黒田美音子(辻)はいつも父親に2人の姉と比較され、出来損ない呼ばわりされていた。路上ライブを聴いてフォークに目覚めた美音子は、嘘つきで有名な大神陽太郎と何事にも無気力な紺野萄子を誘い、フォークソング部の結成を目指して張り切る。空き家の洋館に忍び込んで練習を開始した3人が耳にしたのは、謎のハーモニカの音色だった・・・。
劣等生たちの成長物語であるこの第2部は青春ドラマの色彩が濃い。物語の中心となるバンド仲間の美音子、大神、紺野(この2人はイソップ物語の住人でもある)、ケンジの性格描写が秀逸。当時の歌謡曲や社会現象なども随所に織り込まれており楽しめる。もちろん最大の見所は辻希美であり、演技に歌にその存在感は圧倒的。時には軋轢を起こしながらも、惰性に流されていた周りの人々を目覚めさせていくひたむきな美音子役に魂を吹き込んでいる。中でも、ケンジと初めて心を通わせるシーンは全篇を通じて最高の出来といえよう。そして、フォークに出会った喜びを歌う彼女の満ち足りた表情・・・。辻の魅力を100%引き出した脚本と演出、そしてそれに応えた彼女は見事という他はない。若き日の喜びと挫折、出会いと別れを余すところなく描き切った快作。