冷徹な視線で人間を見つめる劇作家にして映画監督のニール・ラビュートが、自らの戯曲を基に撮り上げたブラックコメディの傑作。ビデオ公開題は『彼氏がステキになったワケ』。
問題作『In the Company of Men』『僕らのセックス、隣の愛人』を放った後は、『ベティ・サイズモア』『抱擁』などマイルドな作品が続いたが、本作では良質なラブコメディの体裁を取りつつ、ラストで人間性の欺瞞とモラリティの限界を観る者につきつける。その内容の強烈さゆえか未公開の憂き目にあったが、これこそまさにラビュート本領発揮の1作と言えよう。
真面目な学生アダムは小太りで眼鏡で髪型もダサくて、ハッキリ言って冴えない容姿の青年。ある日、彼はバイト先の美術館で、彫像にスプレーで性器を描こうとしていた美大生イヴリンと出会う。エキセントリックな彼女に一目惚れしたアダムが、思わずデートの約束を申し出ると、なんとあっさりOKの返事。二人は間もなく付き合い始めることに。アダムはイヴリンのペースに振り回され、彼女に言われるがまま、みるみるうちにスマートなハンサム・ガイに変貌していく。別人のようになった彼の姿に、親友やかつて想いを寄せいていた女友達も驚くが……。
俳優たちの演技は実に見事で、演出も非常にリアル。特に、体を張ってアダム役を演じるポール・ラッドの変貌ぶりには驚かされる。イヴリンを熱演するレイチェル・ワイズは、本作のプロデューサーも兼任。