以前の事であるが、音楽評論家の吉田秀和先生が、NHK-FMの番組、「名曲の楽しみ 私の試聴室」で、この「プラハの春ライヴ」と言う、CDを、取り上げておられた。
私は、ビックリした。私は、もう、輸入盤で、この一点を持っており、結論を先に言えば、このベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番の、ソリストは、ベネデッティ=ミケランジェーリ先生の演奏に非ず! 覆面ピアニストの演奏と、分かっていたから、である。
しかし、吉田秀和先生は、その後、雑誌「レコード芸術」の、記事「今月の一枚」でも、このCDを、高く、評じておられた、と、記憶する。これは大変なことになった。
さて。その頃には、私の手元には、ベネデッティ=ミケランジェーリ先生・独奏の、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番のCDが、いくつか有った。違う録音年月日、違う伴奏指揮者、違うオーケストラとの共演であるが、こと、ピアノのパートに関しては、まったく、違わない。即興的な部分も、総て、計算づくである。
「ベストは、ひとつだけだ。」-ベネデッティ=ミケランジェーリ先生
ところが、この「プラハの春ライヴ」と言うのは、ハチャメチャに、羽目を外した演奏であり、こんな演奏のテイクは、私は、他には「知らない」。もっとも、覆面ピアニストの演奏、と言えども、これだけ弾けたら、相当の、テクニシャンではある。
このCDには、ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニーによる、ベートーヴェンの、交響曲第4番も入っていて、こちらは、本当に、正式な演奏。ただし、モノーラル録音だし、テープ編集が、雑で、楽章の頭が、チョン切られていますけれども、聴き手の心拍を、早める演奏です。