70年発表の1st。ポール・デイヴィス(vo、g、tympani)、マーティン・キットカット(k、mellotron、vo)、アラン・コウドロイ(g、vo)、ティム・ホエトレイ(b)、ロバート・リプソン(dr) の5人からなるグレイシャスのデビュー作。楽曲は一応全曲がオリジナルだが、クラシックやビートルズ/クリムゾンなどの引用が多く、これが逆にこのグループの個性のようなものになっている。
1.は基本はブル−ス・ロックだが、メロディ・ライン/コーラスはビートルズ。そしてバッキングにチェンバロが導入されているなど脈絡がないが、弾きまくりのギター・ソロなど人懐っこい魅力のある曲である。2.はオルガン、メロトロンによるシンフォニックなイントロからしてプログレ・ファンなら感涙ものだろう。中盤からはナチュラル・トーンのギターを中心としたジャズ/フォーク調〜ビートルズ風〜賛美歌風〜と劇的な展開を見せるが、アレンジ的にも破綻は感じられずトータルとしての完成度は聞くべきものを持っている。
ビートルズがもしプログレをやったら?的なグループは結構多いが、本作もその路線と考えて良いと思う。クラシックの引用やプログレ的な演奏/展開がこのグループの胆だが、それよりも親しみやすいメロディ/コーラスの方が印象的で決して難解なイメージはない。スタックリッジに通じる英国ポップ(・・・少しだけルネッサンスもブレンド)のプログレ混ぜ・・・などと表現しておこうと思う。
ちなみにこのグループ、セカンド・アルバムを完成するもののレコード会社 (ヴァーティゴ) のトラブルによって発表されず、後に廉価盤のシリーズの一つとしてひっそりと発表されている。