1979年アメリカ、ボルティモア生まれの女流ヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンの、DG移籍第2弾。イギリスの作曲家ふたりのヴァイオリンのための作品の代表作を収録。エルガーの協奏曲はクライスラーのために書かれた、超絶技巧(作曲者が創案したピッツィカート・トレモロなど)を要する大作で、美しいメロディとしっとりとした和声に彩られています。初演の後クライスラーがエルガーに「ついに不滅の作品を生み出したね」と絶賛しました。ヴォーン・ウィリアムズの作品もヴァイオリンの美しさを十二分に生かした名作です。
何と格調高く、陰翳に富んだ、大人のための素敵な音楽だろうか。エルガーのヴァイオリン協奏曲は、有名なチェロ協奏曲と較べると今ひとつ地味な存在。しかし、ヴァイオリンも管弦楽も一体となって、内向的に絡み合うハーモニーの豊かさ、和声とメロディの味わい深さは比類がない。マイケル・スタインバーグの解説にもあるように、ベルクのヴァイオリン協奏曲に次ぐ20世紀の傑作であることは間違いない。
この演奏は、この曲の真価を多くの人々に知らしめる画期的な名演である。まず心打たれるのは、サー・コリン・デイヴィス指揮ロンドン響のほの暗く気品ある響きだ。作曲家自身が「魂を込めた」とさえ述べた、情熱と瞑想、孤独と憂愁を含んだこの魅力的な協奏曲を、しみじみとした暖かい感情で名匠サー・コリンは包み込んでいる。緩急自在な手練のタクトさばきは、この大曲の隅々まで知り尽くし愛しているサー・コリンならでは。1979年生まれ、24歳のヒラリー・ハーンのヴァイオリンもまた素晴らしい。サー・コリンの懐深い音楽に抱かれて、節度と品格を保ち、炎を内に秘めた、香り高い音楽そのものと化している。自分が一歩でも前に出ようというエゴイズムとは違った無私の姿勢が好ましい。
余白にはヴォーン=ウィリアムズの抒情的な名品「あげひばり」が収められている。天空へと消えていくようなヴァイオリンの不思議なソロは、この名盤をしめくくるのに相応しい静かな余韻を残してくれる。(林田直樹)
ヴァイオリニスト/ヒラリー・ハーン、サー・コリン・デイヴィス指揮、ロンドン交響楽団による2003年録音盤。 (C)RS
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