ベートーヴェン作品の「熱」が時に暑苦しく感じる不真面目なクラシック・リスナーの僕は、全体的に一歩距離を取った感のあるアファナシエフのアプローチというのは非常に耳に優しい。オケの方もアファナシエフのアプローチに自然に合わせた名演だと思う。特に、弱音部の柔らかい料理が素晴らしい。星を一つ削ったのは、本質的にこの人のピアノはソロ演奏の時に真価を発揮すると思うからで、過去のソロ作品と較べた場合、オケと「合わせ」に行った本作はどこか彼自身も手加減しているように感じられたからだ。
通常の演奏よりはかなりあっさりしてるので、ベートーヴェン好きの方々の本作への評価は賛否両論だろう。でも、アファナシエフという人は何を弾いてもそういうリスクを取ってきた訳であり、結局はこの人のそういう挑戦する姿というのが僕は大好きなのだ。