一種の企画アルバムで、タイトルと違って御大エリントンのピアノをぐーっとフィーチャーしたところがポイント。各曲の冒頭に必ずピアノのソロが1コーラスあり、曲の最後もピアノの音で締めくくるというのがルールである。(ただし実際には数曲でビリー・ストレイホーンがピアノを弾いている。)おまけに鍵盤の数が通常の88より3つ多い特殊なピアノを使ったという。
Andres Merenghito, Willie Cook, Eddie Mullens, Ray Nance (tp); Britt Woodman, Booty Wood, Lawrence Brown (tb); Johnny Hodges (as); Russell Procope (as, cl); Jimmy Hamilton (ts, cl); Paul Gonsalves (ts); Harry Carney (bs, bcl); Duke Ellington, Billy Strayhorn (p); Aaron Bell (b); Sam Woodyard (ds); Gerald Wilson (tp); Juan Tizol (v-tb)
まず1曲目のHappy Go Lucky Localはエリントンお得意の「列車もの」である。Localだから今回は各駅停車ですね。まずこの曲で、音の迫力と鮮明さに驚かされる。ベースのしっかりした低音からトランペットの高音まで、ついこの間の録音といっても通りそうな鮮度の高さ。汽車が走っていく様子が目に浮かんでくるような、見事な作曲・アレンジである。
次の注目曲は3曲目。有名なRockin' In Rhythmに対するイントロとして、エリントンがコンサートで弾いていたのがKinda Dukishで、それをメドレーとして録音したらしい。昔大西順子というピアニストがこのオーケストラの演奏をピアノトリオ用にアレンジして演奏していたのを思い出す。そのアルバムのライナーのインタビューで聞き手が「テーマが出てくる瞬間、感じちゃうよね」といったら、大西が「本物聴いたら、もっと感じちゃいますよ」と返したという、その「本物」がこれである。やはり迫力があってカッコイイ。盛り上がってくると気合いというか、合いの手を入れるような声がきこえてきて、相当ノッていることがわかる。
他の聴きどころは、老齢ながら現在も現役で活躍している編曲家Gerald Wilson(当時はまだ若かった!)がPerdido, The Wailerの2曲でアレンジを提供していること。特にPerdidoは、すごくモダンでフレッシュな、すばらしいアレンジだと思う。
とにかくこのアルバムにおけるエリントン楽団のスイング感はものすごい。ベイシー楽団も真っ青、というくらい強烈である。ビックリするような大音量で聴いて欲しい。