ーー以下、2018年3月8日 投稿レビューとほぼ同じ
グラミーでは最優秀賞までには届きませんでしたが、アルバム部門にノミネートされた逸品です(知っての通り、ノミネートされるだけでも優秀アルバム受賞なわけです)
「実はカナダのお姉ちゃんもお気に入りなんだ」と、コステロは自分の嫁さんもこのアルバムが好きなんだと公言しています。
ちなみに、このアルバムの写真を撮っているのはボブ・ディランの息子です。
音楽的には、アメリカ南部のルーツ・ミュージックを土台としていて(他のレビューで書かれている方が指摘されているように)、そこに英国人コステロのポップセンスが滲み出て、息づいているため、それがただアメリカの泥臭いルーツ・ミュージックを "演ってみました” だけには終わらないエルヴィス・コステロならではのサウンドになっています。(「キング・オブ・アメリカ」も然り、そのストレンジャーだからこそ見えているアメリカ……その感じがまた堪らんのです)
コステロの書く曲のその風格たるや、ジミー・リードやハンク・ウィリアムズ、ボ・ディドリーやジェームス・カーetc...にも全く引けを取らないクオリティーの歌、歌、歌。演奏がまた素晴らしく、アトラクションズとは変ってデヴィ・ファラガーがベースに入ったことで安定した下支えとなり、コステロのその歌いっぷりも実に見事です。それと、スティーヴ・ナイーヴのキーボードから生み出される多彩な音色、フレーズの数々! 間違いなくポピュラー・ミュージックにおける現代最高のキーボード・プレイヤーでしょう。そして、何よりジ・インポスターズのバンドサウンドの要であるピート・トーマスのドラム。
(コステロは「アトラクションズのリズム隊は実はピートと僕だったんだ。ブルース・トーマスのベースはリード・ギター志向なんだ。D.ファラガーになって歌にもより専念出来る」と語っています)
ゲスト・ヴォーカリストとして、コステロも高く評価しているルシンダ・ウィリアムズと、グラム・パーソンズを尊敬するコステロの憧れの人 エミルー・ハリスも参加しています。
海外盤(オリジナル)は、最後はE.ハリスとのデュエット曲 ⑬♪スカーレット・タイド で終わります。日本盤にはbonus trackが2曲ーー⑪シーズ・プリング・アウト・ザ・ピン が押し込められ、最後の最後に⑮ザ・モンキー が追加されています。全くこのアルバムの流れに合わない⑪と、 [Clarksdale Session]といった別録りの ⑮が入らないオリジナルの流れこそお薦めです。勿論、2枚組デラックス・エディション「ザ・デリヴァリー・マン」に収録されている [Clarksdale Session] を聴かない手はありません。
また、この時期のライヴを収めたDVD、blu ray「ライヴ・イン・メンフィス」も圧巻です。ただし、映像特典の(ロードムービーを観るように楽しい)ドキュメンタリーの字幕は、2005年発売の最初の国内盤DVDにしか入っていません。